「ひざが痛いから歩かない」は悪循環! ガリガリ音がするひざ痛を専門医が解説
加齢とともに関節軟骨がすり減ると、削られた軟骨のかけらが滑膜を刺激し、炎症が起こる。軟骨が完全になくなると、骨同士がぶつかり合い、骨がすり減るようになる
立ち上がるときや階段を降りる時にひざが痛むことはありませんか。ひざの関節軟骨がすり減る変形性膝関節症のかもしれません。進行すると骨も変形し、歩くのが困難になっていく病気です。発売中の週刊朝日MOOK「腰痛 肩こり ひざ痛のいい病院」では、専門医がひざの痛みの症状や治療法を紹介します。
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中高年のひざの痛みの原因として、もっとも多い変形性膝関節症。日本における変形性膝関節症の推定患者数は2530万人といわれ、日本人の5人に1人がその予備軍、15人に1人が症状を感じているともいわれています。女性のほうが男性より約3倍も多く、女性は50代半ばから、男性は60代半ばから急増します。そして加齢とともに増加し、80歳以上の人のひざを調べると、症状がなくてもほとんどの人に変形性膝関節症がみられるともいわれています。
女性に多い理由ははっきりとわかっていませんが、もともと女性のほうがひざの構造が小さいため、体重が増えると負荷がかかりやすい、靱帯がやわらかく、筋力が弱い傾向がある、閉経によって女性ホルモンが減少することなどが影響すると考えられています。
変形性膝関節症の一番の要因は加齢で、関節軟骨や半月板がすり減ることで、次第にひざが変形していきます。そのほか肥満や筋力の低下、関節軟骨の代謝異常といった遺伝、O脚やX脚などが影響します。また、ひざに負担がかかる仕事やスポーツ、外傷が引き金となって発症することもあります。
最初に感じる発症のサインは、動き始めの痛みです。立ち上がったとき、ふりむいてひざをひねったときなどに痛みますが、少し休んだり、歩いたりしているうちに痛みはおさまります。痛みは、削られた軟骨の破片が関節包の内側にある滑膜を刺激して、炎症を起こすことから生じるものです。
炎症によって関節液が大量に分泌されるようになると、ひざが腫れて、外から見てもひざのお皿部分の輪郭がはっきりしなくなっていきます。朝起きたときに、ひざがこわばることがあるのも特徴です。
進行すると特に階段を下りるのがつらくなり、ひざを曲げたり伸ばしたりしにくくなるため、しゃがむのが困難になり、やがて正座ができなくなります。
軟骨が変性していくと、その下にある骨も変性、変形していき、関節の骨と骨の間が徐々に狭まり、一部が直接ぶつかるようになります。すると立っているだけのときや安静時、夜間にも痛むようになります。コリコリ・ガリガリといった音がすることもありますが、それは骨と骨がぶつかっている音です。
骨同士がぶつかって骨がすり減るようになると、骨はその分を補おうとしますが、元どおりには再生できず、横にはみ出した形で増殖していきます。これを「骨棘(こつきょく)」と呼び、増殖するとひざは節くれだっていきます。
いよいよ自力で歩けなくなってくると、むしろ痛みは感じにくくなっていくこともあります。
■放置して歩かなくなると悪循環を招くことも
一度変形した関節はもとには戻りません。しかし運動療法や生活の工夫などによって症状を和らげ、進行を防ぐことはできます。ひざの変形が進むとこうした保存療法の効果が出にくく、手術を検討せざるをえなくなってくるため、早めに整形外科を受診することが大切です。
変形性膝関節症は徐々に進行していくため、原因がわからないまま市販の湿布薬などで対処してしまい、受診のタイミングが遅れることがあります。受診しないまま、痛みのためにだんだん歩かなくなる、すると筋力が落ちて体重も増えるといった悪循環を招くこともあります。
痛みを感じるようになってから1週間近く様子をみても、痛みが続くとき、もしくはいったんは症状が落ち着いても再び痛みが出るときなどのタイミングで、整形外科を受診しましょう。
変形性膝関節症はX線検査のほか、問診や視診、医師が手を添えてひざを動かし可動域や関節部の腫れなどを診る触診などによって診断できます。X線画像では変形の程度や骨棘の有無を診断することができますが、画像による進行度と症状の程度は、必ずしも比例しません。つまり画像上では変形がかなり進んでいても痛みはそれほど感じていないといったケースもあるのです。
治療はまず、生活の工夫や運動療法、薬物療法を中心とした保存療法を実施します。特に運動療法は、重度の変形性膝関節症の場合を除き、ほとんどの人に効果が表れることがわかっています。ひざのサポーターなどを利用する装具療法や温熱や電気での刺激を与える物理療法を実施することもあります。
一般的に保存療法を3~6カ月実施しても改善がみられないときは、高位脛骨骨切り術や人工膝関節置換術など、手術を検討します。
(文/中寺暁子)
監修/齋藤知行医師(横浜市立大学病院整形外科部長)
※週刊朝日MOOK「腰痛 肩こり ひざ痛のいい病院」から一部抜粋
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2017/11/01 07:00