ナカムラユキ
底冷えの中、活気あふれる京の節分で“だるま集め”に興じる
表情豊かに大小様々8000体、圧倒される数のだるまで埋め尽くされた「達磨寺」
国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■底冷えの中 賑わう京の「節分会」
大寒が過ぎ、節分の頃が最も寒いと言われている冬の京都。地面から感じる冷たさが、つま先から身体の芯へと伝わり、いわゆる盆地特有の“底冷え”が厳しい時季です。そして、2月に入った途端に京の街は、節分の準備にいそいそと動き始めるのです。一層寒さが増す節分の夜、震えながらも意気揚揚と各々の馴染みの神社やお寺の節分会(せつぶんえ)に向かいます。
一年の無事と家内安全を祈る、大切であり楽しみでもある行事です。趣向を凝らした福引や温かな飲み物の接待、露店が並び、寒さを吹き飛ばす勢いで大いに賑わいます。さて、今回は一年で最も賑わう節分に、起上達磨(おきあがりだるま)で広く知られる「法輪寺」通称“達磨寺”を訪ね、だるま尽くしの小物とおやつと共にご紹介します。
法輪寺(達磨寺)/「札だるま」1000円/075―841―7878/京都市上京区行衛町457/節分会は2月2日~3日9:00~21:00、4日は午前中
■圧巻のだるま尽くし 心願成就の達磨節分会
上京区・円町、北野天満宮ゆかりの紙屋川のほとりに通称“達磨寺”で親しまれている「法輪寺」が、あります。1718(享保13)年に万海慈源和尚により創建。禅を大衆に広めるべく、戦後「起き上がり達磨堂」を建て、達磨節分会を始めたと言われています。全国から心願成就を祈って奉納された表情も大きさも様々なだるまが8000体余り祀られ、そのだるま尽くしの光景は、圧巻です。
境内はだるまの形に象られた鬼瓦や窓、本堂の中には干支とだるまが合体した土鈴など全国から集めたご住職のだるまコレクションがずらりと並び、見飽きません。節分会では、大だるまに無病息災を願い記したお札を貼り付けるのが習わしです。恒例の総当り福豆付き福引(分福会)は、京都人のお楽しみ。ほのかに甘いハト茶でほっこり和み、だるまの焼き印が入った名物だるま焼きを頬張り、お札付きだるまを持ち帰ります。“だるま”と言えば、倒れても自力で起き上がり、転んだ力の大きさで起き上がる「七転八起」の心。だるまさんにあやかって、そんな一年を過ごしたいものですね。
といろby Tawaraya Yoshitomi/「都色(といろ)~京だるま~」1箱864円/075―352―6603/京都市下京区烏丸通塩小路下ル ジェイアール京都伊勢丹地下1階/営業時間10:00~20:00/無休(特定日を除く)
■京の色に物語を込めて ころんと転がるだるまのラムネ風菓子
だるまの形をしたお菓子を探していたところ、偶然見つけたのが「といろ」の「京だるま」。干菓子用の木型を使用し、連綿と受け継がれてきたお干菓子の技術を活かしたイチゴ味のラムネ風菓子です。小さなだるまさんがころんと転がる姿も愛らしく、口に含むとほろほろとしたお干菓子のような新食感で、イチゴの濃い味と甘酸っぱい風味が口の中に広がります。
「といろ」は、「十人十色の思いを届けるための和菓子」をコンセプトに、2018年にジェイアール京都伊勢丹地下1階にオープンした、1755(宝歴5)年創業の老舗「京菓子司 俵屋吉富」の新しい和菓子のカタチです。昔から愛されてきた干菓子、琥珀や松露など和菓子をベースに、フルーツを組み合わせて爽やかな味にしたりと、創意工夫が施されています。「といろ」と読める水引のデザインが施された小さな箱は、人と人とを繋げるようなお菓子にしたいという思いから。両手に収まる小箱は、京都の色が詰まった宝箱のようで、誰かにそっと贈りたくなります。
竹笹堂 (たけざさどう)/左)プチカルテ「だるまポケット」440円、中央)ミニカード「だるま」385円、右)アートカード「だるま」1320円/075―353―8585/京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町737/営業時間11:00~18:00/定休日:水曜
■京の路地裏 風情ある辻子(ずし)に佇む木版画工房
京都には数々の辻子(ずし)と呼ばれる、通り抜けが出来る細くて小さな路地があります。往来の賑やかな四条通から綾小路通を結ぶ膏薬辻子(こうやくのずし)は、石畳の風情ある路地。この地で空也上人が平将門の霊を鎮めるため供養したと伝わっており、空也供養(くうやくよう)が訛って膏薬と呼ばれるようになったと言われています。この路地奥の町家に木版画工房「竹笹堂」があります。古くから受け継がれる印刷の技術と言えば「木版印刷」。その歴史は約1300年と言われています。手仕事から生まれる木版は、和紙の上に表されたかすれや色の層の重なりが味わい深く、温もりを感じます。
竹中木版6代目摺師の原田裕子さんは、木版画家であり、図案を起すデザイナーでもあります。店内には一枚ずつ職人さんによって手摺りされた木版画作品から葉書、ノート、便箋などの和紙文具など、和の模様から愛らしいモチーフまで多種多様なアイテムが並び、ずっと座り込んで見ていたくなります。今回は“達磨寺”にちなんで、赤く丸いほっぺが微笑ましいだるま柄のカード類をセレクト。願いをだるまのポケットに記し、叶えたら顔に目を入れるという木版画のプチカルテは、節分の季節の贈り物に添えたくなるカードです。
「ウエストピロー(花)レ・フルール」4070円/プティ・タ・プティ/075―746―5921/京都市中京区寺町通夷川上ル藤木町32/営業時間10:30~18:30/定休日:木曜
■コロンとだるまさんのように転がして 腰に優しくフィットする低反発の腰枕
今回のプティ・タ・プティのテキスタイル/title:花「レ・フルール」。
子供の頃に遊んだ広沢池のほとりに広がる記憶の花がモチーフとなっています。だるまさんのような形でコロンと転がしてインテリアの一部としてもお楽しみいただけるウエストピロー(低反発腰枕)は、低反発の程よい固さが心地良い腰枕です。嵐山の老舗寝具店「Platz(プラッツ)」とのコラボレーションにより生まれた定番アイテム。椅子に座る時、背もたれと腰の間に挟むと、低反発が体の形にフィットし快適にすごせます。長時間のデスクワークや読書、車の乗車時に腰や首のあたりに当てたり、お昼寝のお供にもぴったりです。
だるまさんに願いを込めて 京を歩いてだるま集め
■「十牛の庭」の縁側で冬の陽だまりを感じながら だるま尽くしを楽しむ
毎年、2月の節分には数万人の参拝者で賑わう“達磨寺”「法輪寺」。四季折々の自然美を生み出す、本堂東側の「十牛の庭」の縁側にも、だるまさんがずらりと並び、どこを見てもだるまで埋め尽くされます。京都を歩くと、だるま小物に出合えることも多いので、“だるま集め”に興じるのも一つの楽しみ方ですね。底冷えを覚悟で、寒さ対策をしっかりして、節分の時にしか味わえない活気ある京都へ、ぜひ来てみませんか?
(撮影/竹下さより、編集協力/江下祥子)
ナカムラユキ
京都市在住。イラストレーター、テキスタイルデザイナー。著書に『京都さくら探訪』(文藝春秋)『京都レトロ散歩』(PHP)他多数
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2020/01/22 11:30