カンニング竹山
カンニング竹山“安倍と小沢一郎のニアミス”に遭遇して「いいことだな」と思ったワケとは?
カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在は全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ(撮影/今村拓馬)
ニアミスした小沢一郎氏(左)と安倍総理(C)朝日新聞社
同じ日に同じ場所にいた安倍総理と小沢一郎氏の“ニアミス”にカンニング竹山さんは、今の政治離れの根源を改めて考え、さらにはメディア分散化時代のテレビ番組のあり方に痛烈に苦言を呈す!
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先日、僕が出演しているAbemaTVの「カンニング竹山の土曜TheNIGHT」という番組に、小沢一郎さんが来ました。その日の午前中に小沢さんの収録があって、スケジュール上、そうなったと思うんですけど、夜には橋下徹さんのAbemaTVの番組に、安倍総理が来たんですよ。偶然ですけど、安倍さんと小沢さんがある一日に同じ建物来たということになった。
政治的考えは別にして、なんか、いいことだなと思ったんですよね。どうしてかって言うと総理とか、小沢さんみたいな政治家の大物の人って、NHKの堅い番組だとか、民放だったら報道番組だとかそういうのには出演するけど、そんな堅い番組はなかなか若い子は見ない。政治に興味ない人も見ない。そうすると、今回の安倍さんや小沢さんのことは、ある一定の人しか見なくなる。それがイコール政治離れになると思うんです。
総理や大物政治家が今回のような番組に出るということは若い人や政治に興味がない人も見る機会が増えるかもしれないですよね。政治離れとかって言われているけれど、政治家の人たちももっと積極的にそういう番組に出るっほうがいい。もちろん、政治評論家の人と話すような堅い番組に出ることも大事ですけど、それだけだと、正直、そんな堅い番組見ていても、話に追いつけない人ってたくさんいますよね?わからない人をわからないまま放っておくということでいいのか?
そういう人たちにも政治の話をわかるように、例えば“人間そのもの”を見せていくとか、小沢さんを「このおじちゃん、こんな人なんだ」って興味を持ってもらったらいいと思う。今回、小沢さんは僕と番組で話して、安倍さんはサバンナの高橋くんと話していましたけど、僕や高橋くんが話すことで、小沢さんや安倍さんとの距離感が縮まると思うんですよね。
それを批判する人も結構いるんですけど、それ、批判していたら今までと何も変わらないと思うんですよ。アンタら政治の話がわかっているからいいけど、意外とわかっていない人、いっぱいいるよ。
そういうことが、AbemaTVでパッとできちゃうのって素晴らしいし、でも本当は地上波のテレビでできればいいのになって思いますよ。僕はテレビが大好きだし、今でも影響力を持っていると思っている。テレビで政治をわかりやすくすれば、もっとみんな考えるようになるし、「これ、なんかおかしくない?」ってもっと気軽な話題になってくると思うんですよね。今回の都知事選だって盛り上がると思う。「演説やるらしいから、見に行かない?」ってなるかもしれない。もっとそういうふうになっていったらいいなと思う。
どうして、テレビでできないのか?今、テレビは難しい番組が多くなっちゃっているんですよね。視聴率も15歳から49歳までのコア層を狙うっていう方針に変わっているから、そこに向けての番組作りになってきているんですよ。
だから、なるべく若いタレントのキャスティングしたい、金がないから予算を落としたい、なおかつ視聴者から文句言われたくない、スポンサーにも文句言われたくない……そうなったら何を作るかって言えば、学校の授業の延長ですよね。学校で習っている勉強バラエティですよ。それが親世代にも文句言われないですよね。クイズ番組とか教科書からのネタとか、この漢字がどうだとか。バトルしてみせたり、有名大学出身というキャラを作ったり、見せ方を変えるだけですよね。悪いことではないけれども、そういう番組ばっかりになってきてる。でもそれはみんな悩みながら作っているからしょうがない事なんですよね
どんどん、民放のテレビ番組が“教育テレビ化”していますよね。今、親が子どもに見せたくない番組って放送してないでしょ?そういう番組もないと子どもの成長にとってダメだと思いますよ。子どもが見ていると親が怒る番組。親も怒るんだけど、たまに笑っている番組。(笑)「こんなの見たらバカになるよ!」って親に言われるような、バカになる番組も必要ですよ。(笑)
芸人を空から飛ばしたり、水車に貼り付けられて水をかけられてバンバン回されたり、我々はそういうのやりたいわけですよね。爆薬をガンガン爆発させて「やめろー!」って炎の間を駆け抜けるときにものすごい幸せを感じるわけです。(笑)「仕事してんなー」っていう。そういう番組はできなくなっているから、結局、優良な番組ばっかりになっていく。
優良な番組って考えたとき、安倍さんや小沢さんを番組に呼んだときに、僕とか、サバンナ高橋くんには回させないですよね?報道部のデスクとか、解説委員とか、エライ感じの名前の人が回すと思うんですけど、そうなると、どんどん見なくなるのに、そのほうが安パイですよね。若い子は見なくなる、そうなると政治家は呼ばなくなる、政治の話からどんどん離れていく。
小沢さんが番組に出てくれて面白かったのは、はっきり赤裸々に、他のメディアでは言わないことを話すんですよ。選挙には絶対勝つとは以前から語っていましたが、野党連合ではなくて、新しい党を作るってことまで話していた。連合じゃない、政党を作るんだと。秋に選挙があるかもしれないから夏までには候補者も決めなきゃいけないって。なかなか普段発言しないことをはっきり話すし、そういう面もあったりするから、こういう斬り方をする番組も大切かなと思った。
いい悪いは別として、小沢さんの政治に対する考え方がすごくわかりやすかった。政治記者によっては「いいや、あいつは嘘つきだ」「建前だけ話している」とか言う人もいるかもしれない。でも、番組では小沢さんの話はわかりやすかったし、たぶん、普段、政治家が話している番組を見たことない人も見た可能性はありますよね?
今回のAbemaTVがあるように今メディアが分散化している。だからテレビが王様っていう時代が徐々に薄れてきているのは確かですよね。でも、影響力は一番あるんだけど、いまはオンタイムで見る影響力でなく、ネットニュースでの拡散なんですよね。特に、若い子たちは、番組そのものを見ていなくて、放送されたものを文字で起こされたSNSという中で拡散したものを見て「あーだ、こーだ」言っているっていう。それが若い子の中でのシステムとして完全に構築している。
だから、“そこ”なんじゃないじゃないか?って思う。テレビは学校の授業の延長番組を作ることばかり考えていないで、ネットで拡散っていう、SNSで発信を担当する部署が、テレビには必要なんじゃないか?そこに金使って、スポンサー入れたほうが若い子への影響はあって、確実に個人に届いていくじゃないですか。
安倍さんや小沢さんが出演したのはAbemaTVの深夜番組だし、自分で探さない限り見ないかもしれないけど、どこかで誰かがSNSで書いて拡散することによって見出す人がいるわけですよね。AbemaTVって生放送してその後一週間は視聴無料だから、オンタイムで見ていなかった人も見られるわけですよね。
今回のAbemaTVのように安倍さんや小沢さんを番組に呼んで攻めたことしてくるし、違った方法で視聴を拡げていくし、そうしたメディアとテレビは闘っていかないといけない。影響力はテレビが一番だって僕は思っているけど、安パイ番組を作っているだけでは、離れていく若い子を取り戻すのは無理だということに気が付かないいけない時代に入ってきているような気がしています。お笑いどさくさ世代のオジサン芸人が生意気にすみません。
dot.
2020/06/24 11:30