※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 もともとアトピー性皮膚炎がある人やニキビのある人はマスクによる皮膚炎が増加しやすいことも報告されています。多くの患者さんはマスクを外した後にかゆみを感じ、顔をこすっているとのことで感染予防対策上でも注意が必要です。顔面全体をこする行為や、目の周りをかいたりかゆみを抑えるために叩いたりすることは、白内障や網膜剥離のリスクにつながります。

 マスクを不潔なまま使い回すのも避けましょう。833人を対象とした報告ではマスクに関する皮膚のトラブルは54.5%あり、ニキビや顔の赤み、かゆみは多かったと報告されています。同じマスクを使い続けている人は毎日マスクを交換する人に比べて皮膚のトラブルが多かったという報告もあります。これはマスクの内側の汚れが皮膚炎を起こしている可能性が考えられます。汗やファンデーションなどの化粧品がマスク内側に付着することでかぶれのもととなります。毎日清潔なマスクに交換することをおすすめします。

 マスクをつけていたからといって、顔にできるすべての皮膚トラブルがマスクによるものとは限りません。両頬から鼻の頭にかけて羽を広げた蝶(ちょう)のように見える赤みは別の病気の可能性があります。蝶形紅斑と呼ばれるもので全身性エリテマトーデス(SLE)という病気の特徴的な所見です。SLEは皮膚に症状が出る以外、腎臓などの内臓にも症状が出現し膠原病内科での詳しい検査や治療が必要になります。マスク部位に一致した赤みだからといってマスクによるトラブルと自己判断せずに、治りが悪い発疹は皮膚科で相談してください。

 以上、マスク着用に伴う皮膚のトラブルについてまとめました。医療従事者が病院内でマスクなしで患者さんと話すことはこの先なさそうですが、せめて日常生活ではマスクなしの生活を送りたいものです。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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