マスクの着用が日常化してすでに2年。ある研究では、感染予防対策で皮膚炎を起こした人の83.1%が鼻の頭に皮膚症状が起きました。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、マスクに伴う皮膚のトラブルとその対策について解説します。

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 オミクロン株の流行により、コロナウイルス感染対策の継続が求められています。手洗い、うがいに加えて、マスクの着用が日常化してすでに2年が経過しています。マスク着用に伴う皮膚のトラブルは皮膚科で診る疾患として増え、多くの論文も発表されました。今回はマスクに伴う皮膚のトラブルとその対策について解説します。

 まず、みなさんご存じの通りマスクには主に三つの種類があります。不織布マスク、布マスク、ウレタンマスクです。感染拡大予防の観点から不織布マスクの着用が推奨されています。ただ、使用感や皮膚への刺激からウレタンマスクを好んで使用する人も多いと思います。ウレタンマスクは、呼吸のしやすさや蒸れにくさの観点から暑い時期に好んで使用する人が増えました。しかしウレタンマスクでも注意が必要です。原料となるイソシアネートはアレルギー症状も報告されているからです。決してウレタンマスクだからといって万人の肌に優しいわけではありません。

 マスク着用によって皮膚症状が起きやすい部位は、鼻の高い部分です。医療従事者を対象とした研究では、感染予防対策で皮膚炎を起こした526人のうち83.1%が鼻の頭に皮膚症状が起きました。次に頬で、乾燥やつっぱり感、痛み、かゆみが出現していました。見た目としては、赤みやフケが多く、中でも6時間以上マスクを着用した人に皮膚のトラブルが多かったようです。つまり、仕事や学校で家を出て帰るまでの間ずっとマスクを着用していると、マスクによる皮膚のトラブルがかなりの確率で起きます。オープンスペースやソーシャルディスタンスを保てる場所ではマスクを外すことも必要でしょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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