金満体質は、中国代表チームに限った話ではなく、中国スーパーリーグを含めたサッカー界全体に言えることだ。経済発展で巨額マネーを手にした中国企業は、習近平国家主席のサッカー熱もあいまってサッカークラブへの投資を競ってきた。その結果、クラブは潤沢な資金を持つようになり、選手たちの年俸も飛躍的に向上した。高年俸を得る選手はプライドが高くなり、人の話に耳を傾けなくなった者もいるという。

 北京在住のサッカー記者はこんな危惧を口にする。

「中国史上最強と言われる02年日韓ワールドカップの頃の中国代表は謙虚な姿勢を示す選手が多かったんです。イングランド・エバートンなどで長くプレーした李鉄、2008年の東アジア選手権で日本代表の鈴木啓太に『のど輪』を食らわせたことで有名になった李偉峰らは、メディアに対しても紳士的な振る舞いを見せてくれました。ですが、今はメディアより選手の方がはるかにリッチで、社会的地位も上なので、われわれを見下してロクに話をしようともしません。選手の意識がガラリと変わったと痛感させられます。国際的には大した実績もないのにリッピに尊大な態度を取った選手もいたでしょうから、監督側もやりづらかったと思います」

 巨額マネーが選手育成やサッカー環境の整備に活用されればよかったが、企業の投資の行く先は選手や監督の年俸など目に見える部分に偏ってしまった。それも近年の中国サッカーの失敗だと、前出の北京在住記者はズバリ指摘する。

「中国は政治家もスポーツ界のリーダーも3~4年単位でコロコロ変わる傾向が強い。そうなると長期的ビジョンを持つのが難しくなります。サッカーに関しては特にそうで、『知名度のある指導者を連れて来ればいい』とだけ考えて、サポート体制を構築するのを二の次にしてしまう。2010年代の監督を見ると、元スペイン代表監督のホセ・アントニオ・カマーチョ、マルセイユやリヨンで成功したアラン・ペラン、リッピと名前だけを見ればそうそうたる面々が来ていますが、内容はむしろ後退しているといった方がいいかもしれない。『金が毒になった』という指摘は的を射ていると思います」

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