イラン戦に敗れ悔しい表情を見せる中国代表の張呈棟(写真:getty Images)
イラン戦に敗れ悔しい表情を見せる中国代表の張呈棟(写真:getty Images)

 2022年ワールドカップ開催国・カタールの初戴冠という形で終わった19年アジアカップ(UAE)。ベスト4の3つを占めた中東勢、史上初の8強入りを果たしたベトナムなど東南アジア勢の躍進が目立った大会だったが、東アジア勢は停滞感が否めなかった。若い世代を積極起用してファイナル進出を果たした日本は、辛うじてプライドを保ったものの、韓国と中国が揃って8強止まり。北朝鮮は3戦全敗で大会を去った。

 15年オーストラリア大会ベスト8の中国は、イタリア代表を率いて06年ドイツワールドカップ制覇を果たしたマルチェロ・リッピ監督が指揮を執るチームだっただけに期待も少なからずあったが、前回超えは叶わなかった。名将は、16年10月から2年以上に渡ってチーム作りを進めてきたものの、18年ロシアワールドカップアジア最終予選ではイラン・韓国と同組の5位に低迷。今大会も同グループだった韓国に敗れたが、何とか16強進出。ラウンド16で成長著しいタイを2-1で撃破するも、準々決勝でイランに0-3と完膚なきまでに叩きのめされた。

 中国国内では「ベスト8」という結果を「やっぱりそうか」と受け止める向きが多いという。UAEで取材していた中国人記者は、中国代表について、こう話す。

「前回大会でベスト8だったので、今回の中国代表には4強入りが期待されていました。タイに勝って準々決勝に進んだ時は多少なりとも希望を持ったサポーターもいましたが、イラン戦の内容には失望感が大きすぎた。リッピはタイムアップの笛が鳴る前にベンチを立つ始末で、試合後の記者会見で選手を称える言葉の1つも出せなかった。それほど内容が乏しかったのは確かです」

 その要因を分析すると、リッピの戦術を中国代表選手たちが十分に把握・実践できなかったことが大きいようだ。

 前出の記者が続ける。

「イタリア代表のリッピは多様な戦術を選手に植え付けていたと聞きますが、中国の選手たちには、そこまでの理解力や器がなかった。リッピも妥協して約束事をできるだけシンプルにし、選手たちに徹底させようとしました。それでロシアの最終予選ではチーム状態が上向き、結果的にも改善が見られたのですが、今回は成果が出なかった。12月には海南島で長期合宿を組み、チームの一体感や熟成度を高める時間は十分あったはずなのに、結果にはつながらなかったんです」

 さらに、指揮官への批判も高まっているようだ。

「リッピの推定年俸は年間13億円で、2年3カ月の間に35億円くらいはもらっていたはず。『高額サラリーに見合った成績を残していない』という見方をする人は少なくない。ただ、中国サッカー界の重鎮にはイタリアの黄金期を作った名将を崇拝する傾向があって、彼のやり方に誰も口を出さなかった。いわば『丸投げ』です。そういう中国サッカー界の体質も問題だと感じます」(前出の記者)

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問題点の多い中国サッカーの“金満体質”