“ピッカリ投法”“体調不良弾”…偶然が生み出した「うれしい誤算」 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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“ピッカリ投法”“体調不良弾”…偶然が生み出した「うれしい誤算」

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久保田龍雄dot.
元近鉄の佐野重樹(慈紀) (c)朝日新聞社

元近鉄の佐野重樹(慈紀) (c)朝日新聞社

 風邪を原因とする腹痛のようで、嘔吐や下痢も併発する重症。仰木彬監督は急きょ、藤本博史への交代を決め、審判団と王貞治監督の了解を得た。

 ところが、ネット裏の公式記録員から「指名打者は1度打席に立たなければ、交代を認められない」とクレームがつき、話は一転白紙に。DHを解除して、先発の木田優夫を「4番投手」で打席に立たせる代替案も検討されたが、不利になるのは明らか。窮余の一策で、ニールに無理を承知で1打席だけ打ってもらうことになった。

 かくしてニールは、イチローの右前タイムリーで1点を先制した直後の1死一塁で打席に立ち、吉武慎太郎の真ん中高めカーブを一振。「さっさとフライを打ち上げて終わりにしたい」ということなのだが、下り腹で余計な力が入らなかったことが幸いしたのか、快音を発した打球は、なんと右翼席に突き刺さる2ランとなった。額に脂汗を滲ませながら早足でダイヤモンドを1周したニールは、一目散にベンチを駆け抜けると、トイレに直行。「本塁打?それどころじゃない!」とだけコメントすると、婚約者のジャスミンさんに伴われて、一路病院へと向かった。

 試合は初回の先制パンチが功を奏して、オリックスが13対2で圧勝。仰木監督は「王さんに迷惑かけた。儲けものの感じだ」と気遣いつつも、けがの功名の一発にまんざらでもなさそう。

 一方、王監督は「しゃあない。いろんなことがあるが、理由にはできない」と大量失点の投手陣に反省を促していた。

 サッカーW杯開幕を翌日に控えた98年6月9日の近鉄vsロッテ(千葉マリン)で、サッカー選手も顔負け(?)のヘディングシュートが飛び出した。

 見事なヘディングを決めたのは、前年ロッテに入団した元メジャーリーガーのキャリオン。

 0対1の4回、先頭打者として左前安打で出塁したが、次打者・初芝清の遊直で飛び出してしまった。

 しかし、さすがは元メジャーリーガー。慌てず騒がず、送球の行方を見ながら、何とかセーフになろうと帰塁を試みた。そして、一塁に送球されるタイミングを見澄ましたかのように、頭を左右に振りながら走ると、次の瞬間、ボールは見事頭に命中。ヘディングシュートが決まり、ボールが一塁ファウルグラウンドを転々とする間に、キャリオンは一塁ベースをしっかりと踏んでから、二塁に進んだ。

 しかし、野球の場合、故意に送球に当たりに行くヘディングは明らかに反則行為。近鉄側も「キャリオンが不自然な戻り方をした」とアピールし、守備妨害で併殺になってしまった。

 キャリオンは3月1日のオープン戦、巨人戦でも故意に送球に当たったとして守備妨害をとられており、この“前科”も心証を悪くしたのは言うまでもない。

 それでも近藤昭仁監督は諦めきれず、10分間にわたって抗議したが、野球はサッカーに非ず。判定は変わらなかった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。


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