一方、そうした段階を経て、経済がある程度の規模に達し、国民一人当たりGDPも上がって豊かになってくると、徐々に出生率が下がってくる。さらに、教育環境が変化し、子どもにはお金と手間がかかるようになる。子どもの給料を当てにしなくても世帯の生活は安定して来るから、無理して子どもを増やそうというインセンティブも無くなる。こうして人口減少時代が始まるのだ。人口オーナスと呼ばれる人口減少によって経済成長の速度は減速する。日本は今、この段階にある。

 こうした発展段階になると、人口減少によって、労働力が貴重になり、賃金は上がって労働条件も向上する。企業も優秀な人材を確保するために対応を迫られ、高い労働条件を提示できない企業は淘汰されて当然ということになる。こうして、自然と「人を大切にする」社会になっていく。

 また、経済最優先を続けると公害などが発生し、資源・エネルギーの制約も生じる。経済的にゆとりができた市民は、健康や安全に敏感になり、自然や環境を守れと要求する。企業がそれに対応することで、新たな産業分野が開かれ、それが国際競争力を高めることにもなることが認識されるようになる。その結果、「自然・環境を大切にする」社会への転換が進む。

 さらに、生活水準が向上すると人々に余裕が生まれ、教育水準の向上と相俟って、社会的正義への要請も高まる。民主化はもちろん、「公正なルールを保持、執行する」社会が求められるのだ。

 西欧・北欧諸国を見ると、概ねこうした課題に応えて、先進国となっていったのがわかる。一人当たりGDPが高いだけではなく、こうした要請すべてに応える経済・政治状況を実現するのが、真の先進国ということになるのではないだろうか。 

 この観点から見て、日本は先進国と言えるのか極めて疑問である。

■労働者の権利を無視する嫌韓派

 さて、冒頭のニュースに戻ろう。

 韓国の最低賃金の引き上げ率は、毎年7%程度が続いていたが、文大統領の就任後、昨年は16.4%、今年も10.9%とかなり急ピッチの引き上げが続いている。こうした急進的なやり方は、企業側に大きな負担となるため、かえって雇用を削減したり、脱法的な動きが生じたりして、必ずしも低所得層の生活改善にはつながっていないという批判もある。

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果たして韓国への批判は正しいのか