現に、直近の統計では、18年1-3月期に経済格差が前年より拡大したという結果も出ているし、失業率もかえって悪化しているという統計もある。昨年に比べて、今回の最低賃金引き上げ率を5.5ポイント縮小したのは、その点への配慮だと考えられる。
こうした推移を見て、日本の嫌韓派は、韓国の経済政策は失敗したとはやし立てている。もちろん、彼らは、アベノミクスで日本の経済が復活したと信じている人たちだ。
また、日本の産業界も、「最低賃金の引き上げは慎重に」という時に、必ず、韓国ではうまくいっていないということを理由に挙げることになるだろう。
しかし、果たしてそれで良いのだろうか。
日本では、いまだにサービス残業が事実上放置されている。そして、今も、残業時間が青天井という驚くべき状況にある。「過労死」という言葉が世界に広まるほどの恥ずかしい状況だ。今回の働き方改革法成立で、そうした構造にようやくメスが入り、残業時間の上限が19年度から、原則年720時間となるなど法律ではっきり義務化される。
それはそれで、一つの進展なのだが、今回の働き方改革の議論でも、まずは、企業の都合が優先されるという体質は変わっていない。新たな規制の適用は、19年度からだが、中小企業には1年の猶予がある。中小企業が大変だからという企業の都合によるものだ。逆に言えば、中小企業の労働者は、大企業の労働者よりも人権保護のレベルが低くて良いというのが日本政府の立場だということだ。
また、驚くべきことに、建設、自動車運転(運輸)、医師は5年間もこの規制の適用が猶予される。これも企業や病院が大変だからという理由で、ここで働く人々の人権は無視されたままだ。しかも、運輸は5年後も他業種より緩い年960時間の上限規制となることに決まっている。月80時間だ。ここでも企業が大変だからという理由で、トラック運転手の健康や人権は他の産業の人よりも一段低い扱いにしてしまったのだ。
■アベノミクスは先進国の政策ではない
一人当たりGDPでは、日本はかなり落ちぶれてしまった。だから、もう先進国ではないという考え方もあるだろう。17年には、シンガポールの57,713ドル(世界9位)に比べて、日本は38,440ドル(同25位)だから、シンガポールは日本の1.5倍だ。