週刊朝日 2023年2月17日号より
週刊朝日 2023年2月17日号より

「例えば犬の平均体温は38.5度で、人間より2度ほど高い。それを知らずに『熱があるから』とからだを冷やそうと、犬を水につけたりする人がいるんです。『爪がフローリングに当たってうるさいので、血が出てもいいから深く切って』『ヒゲの長さがそろってないからカットして』などという非常識な飼い主を多く見てきました」

■飼い主の無知が飼育放棄を招く

 これまでも講演や専門学校で動物の飼育について教え、著作やメディア出演などを通じて警鐘を鳴らしてきた。だが、コロナ禍で危機感がいっそう高まった。「ステイホーム」でペットを衝動買いする人が増えたのだ。

 勝俣さんがつい最近、ペットショップのスタッフから聞いた話がある。

「チワワを買った若い夫婦が、次の日に返しに来たという。なぜだと思いますか? 『うんちとおしっこをしたから』だそう。信じられないでしょうが、こうした話は1件や2件じゃないんです」

 飼い主の無知は、安易な飼育放棄につながる。環境省の統計によると、2020年度の犬の引き取り数は7万2千匹以上。うち1年間で犬4059匹、猫1万9705匹が殺処分されている。

「動物飼育の知識がないのは、日本の教育のせいでもあります。動物福祉の先進国ドイツでは小学校で、犬や猫に関する知識を学びます。しかし日本では皆無です。ペットショップで『目と目が合った!』で動物を飼ってはいけない。犬にはどんな種類があるのか、どんな特徴があるのか、何年くらい生きるのか、終生飼育にはどのくらいの費用がかかるのか──。きちんと知ったうえで、飼育を決めてほしい。他団体の検定もありますが、『いぬ検定』も必要だと感じました」と勝俣さん。

「いぬ検定」の問題はテキストから80問出る。テキストは勝俣さんや獣医師らが執筆。「犬の起源や歴史」から「しつけ」「防災」「病気のケア」などが写真付きでわかりやすく書かれ、楽しみながら犬の情報と知識が得られる。左に例題を載せたので、解いてみてほしい。勝俣さんが言う。

「検定のメリットはただひとつ『犬が喜ぶ』につきます。正しい飼い方をすれば、犬はストレスがたまらない。間違った飼い方をされると犬は悲しみます。しかもそれを口に出せないので、ストレスから吠える、噛む、などの問題行動につながることもあるのです」

 犬のからだの仕組みを知ることで適切なケアができ、その習性を知ることで、しつけの一助にもなる。いま犬を飼っている人はもちろん、これから飼う人もぜひ「いぬ検定」で知識を増やしてみてはいかがだろう。きっと「うちの子の気持ち」がよりわかるはずだ。

(フリーランス記者・中村千晶)

週刊朝日  2023年2月17日号

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