「だから内容は関係ないんですって。会話にはテーマや議題がなければいけないと思っている男性には、なかなか理解できないとは思いますがね」
わが両親との円満を図って会話しておる妻にとって、昼寝して世間話もせぬ拙者は、妻の両親とは仲良くする気がないように見える、というわけか……。
「でもね、たいていの場合、夫が妻の実家で寝てしまうのは、本当にくつろいでるからとか図太いからじゃありません。夫よりも付き合いの長い妻の両親と妻との会話には、自分が知らないこともたくさん出てきますよね。でも男って、知らないことを『わからない』とか『教えてください』と言うのがとても苦手な生き物なんです。だから妻の実家の団らんは居心地が悪くて、眠ってしまうんです」
そうそう、それじゃ! どうも妻の実家へ行くと自分が邪魔者のような気がして、会話に入っていけぬゆえ、寝てしまう……。
●夫の昼寝は満員電車のスマホと同じ!?
「満員電車で、スマホに没頭したり、眠ったりしている人が多いのは、不快感を断ち切るために、殻にこもって自分の世界観をつくる行為なんですが、妻の実家での夫の昼寝もそれと同じ」
殻にこもる! その通り!
「夫と自分の両親との関係を円満にしたいなら、妻は会話に入りづらい夫を仲間に入れる工夫(詳細は上記参照)をしなくては。けれど、夫も苦手だからと殻にこもって寝てちゃダメです」
わかってはおるのじゃが……。
「定年後の夫が妻に煙たがられるのは、ずっと家にいて妻にかまってほしがるから。仕事仲間との縁が切れても、近所のコミュニティーに飛び込んで新しい友達を作れないんです。定年後の人生のためにも、自分を変える努力をしなくては」
むむむ。努力か……。
●まずは自分から心のドアをノック
「それには自分から発信して、コミュニケーションをとりたいと意思表示し、相手に働きかけることが重要です。これを『ノッキング行動』といいます」
心のドアをノックでござるな。
「ノッキングの第一歩はあいさつです。黙って頭を下げるんじゃなく、笑顔で声を出してあいさつ。これだけで、相手との距離はぐっと近くなるんです。夫婦円満の秘訣でもありますね」
よし、明日から「笑顔であいさつ」千本ノックに挑戦いたす!
(取材・文 武士沢忠長 AERA with Baby2015年4月号より抜粋)