だが、久里浜医療センターで精神科医長を務め、『スマホ依存から脳を守る』の著者、中山秀紀医師はこう警鐘を鳴らす。

「とんでもない。スマホは、『最凶』の依存物です。スマホやオンラインゲームへののめり込みを、『依存』という病気であると意識せずに生活を送る人がどれほど多いことか。徐々に身体や精神をむしばむ、スマホやゲームがどれだけ危険か知ってほしい」

 同センターは、アルコールなどの依存症治療を手掛けてきた。2011年からは、「ネット依存」外来を新設した。小学校5、6年生から中学・高校生が受診者の7割を占め、2カ月先まで予約はいっぱいだという。

 依存症になるほどネット漬けの生活を送る子どもたち。「特殊な環境で育った、特殊な子ども」で、わが家には関係ないと感じる人も多いだろう。

「そうでもありません。小学校にあがるくらいの時期から、ゲーム機や親のパソコンを使い、中学生前後で、自分用のスマホを与えられるといった、ごく普通の環境です」(中山医師)

 子どもらが依存に陥るのは、「学校で友達とうまくいかない」「部活をやめて時間が余った」など、ちょっとしたきっかけだ。

 教室の友達とはうまく話せなくても、オンラインゲームやSNSのサイト内ならば、話しベタが目立たずコミュニケーションできる。

 そして、夏休みをきっかけにさらなる依存に陥る。

 不特定多数とのオンラインゲームに、朝方まで没頭。昼すぎに起きる生活が続くと、2学期が始まっても朝起きられず、学校に通えなくなる。

 典型的なパターンだ。そもそも依存症とは何か。

「まず『やる』『やらない』の制御が困難になる。さらに、学校や会社に行けず、社会生活に深刻な支障をきたすほど執着する状態を指します」(同)

 アルコールやギャンブル、ゲームやネットなど依存性のあるものの共通点は、「手軽に快楽を得られる」という点だ。仕事で疲れていても、ビールの缶は簡単に開き、たばこの火は2、3秒でつけられる。

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