世界保健機関(WHO)は、「ゲーム障害」をギャンブル障害やアルコール依存症などと類似の疾病と位置づけた。18年、厚生労働省の研究班は、ネット依存の疑いのある中高生は5年で約40万人増えて、93万人にのぼるとの推計を発表している。
中山医師によれば、親にスマホやオンラインゲームを取り上げられた子どもが、家具を壊したり家族を殴るなど、暴力行為に走るケースも少なくない。
依存状態から脱却するためには、スマホから物理的に離れ、使わない時間をつくる必要がある。久里浜医療センターでは、スマホやオンラインゲームからどうしても離れられない人のために、入院による心理療法や治療キャンプも行っている。
一方、60~80代の高齢者も緊急事態宣言後、ほとんど外出できず、スマホなどでSNSと向き合う時間が増えているという。だが、落とし穴がある。
「高齢者の場合、依存するほど使い続ける人はあまり多くありません。問題になるのは、スマホやタブレットを使うことによって引き起こされる脳過労です」
そう警鐘を鳴らすのは、おくむらメモリークリニック院長の奥村歩医師だ。
脳外科医として、認知症やうつ病に関する「もの忘れ外来」で多くの高齢者を診察してきた。
「物忘れがひどい。何もやる気がしない」
奥村医師の「もの忘れ外来」を訪れ、こう訴える高齢者は少なくない。だがMRIで脳の状態を見ても、記憶や学習をつかさどる海馬の萎縮は見られない。
「たいていは、スマホやネットを使いすぎて、脳が過労を起こしている状態です」(奥村医師)
つい最近までネットともスマホとも、さほど縁のない生活であった高齢者が、定年退職をきっかけにスマホにはまるケースもある。
高学歴のインテリ層ほど年齢を重ねても勉強熱心だ。「社会とつながっていなければ」という強迫観念も強く、ネットにのめり込む傾向がある。
また最近は、共働きの家庭の孫を預かる祖父母が増えてきた。孫と触れあう時間が増えてうれしい一方で、奥村医師にこう打ち明けるお年寄りも増えた。