「7年ほど前から、個性をより伸ばそうと選択制の講習会を増やし、主体的に学べる環境づくりを強化しました。今では東大の推薦に対応できそうな生徒も増えています。要件緩和は願ったりです」

 この他、広島高校や日比谷高校など全国各地に生徒を推薦で東大に連続して送り出す学校がある。なぜ、常連校が生まれるのか。前出の武田さんは言う。

「東大は入学後に学部を決めるレイト・スペシャリゼーションを掲げていますが、学部を決めて入試を受ける推薦志望者には初めから専門分野への強い好奇心や知識を求めます。そうした自主性、積極性のある生徒に、東大の推薦入試に出願できるような教育をする学校となると、特定の学校が上位になることは否めません」

 県立岐阜高校も16~19年度に推薦で計4人の生徒を東大に送り出した。自然科学部の存在が大きいという。同校進路指導部の立川喜教(よしのり)教諭(47)は言う。

「自然科学部の生物班では、ヤマトサンショウウオの保護活動などを通して生き物を調査や研究します。今年3月まで同部を指導した教員が長年研究してきたことでもあり、その保護活動にも力を入れていました。高校での研究レベルを超えた専門性の高い指導もあり生物班から東大合格者が複数出ています」

 生徒の大半が国公立大を志望する同校では、2年生の12月ごろから担任と進路を話し合い、翌年11月の校内選考で各大学への出願者を決定。おひざ元の名古屋大学を志望する生徒は例年100人前後。推薦での合格実績も重ねてきたが、手放しで推薦を勧めるわけではない。

受験機会が一つ増えると考える生徒もいますが、一般入試の勉強と並行して面接などの対策をしなければならず、覚悟が必要です」(立川教諭)

 一方、AO・推薦を絶好の機会と見る学校もある。大阪府にある私立金蘭千里高校だ。

 同校では、過去3年間にAO・推薦で京大4人、阪大4人、神戸大4人と関西の難関国立大へ生徒を送り込んできた。10年ほど前から医学科志望生に向けてAO・推薦対策をしていたが、国公立大の入試方式拡大を受け、生徒指導の幅を広げた。企画室長の渡辺徹教諭(47)は言う。

「AO・推薦か一般かは自由に選びなさいというのが本校のスタンス。選べない生徒には、迷ったときは両方やってみようと伝えています。とはいえ、国公立大のハードルは高いので、180人の生徒のうち最終的にチャレンジするのは最大で30人前後です」

(編集部・福井しほ、石臥薫子)

AERA 2020年5月25日号より抜粋

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福井しほ

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大阪生まれ、大阪育ち。

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