緊急事態宣言の解除後も95%が在宅勤務を続けている同社が4~6月に行った社内アンケートによると、9割以上が「リモート環境で自身や部下のパフォーマンスへの影響がなかった」もしくは「向上した」と回答。しかも、向上したとの回答は日を追うごとに増加しているという。また、「生産性高く働くために必要なオフィス出社日数」を聞いたところ、「週1~2回」が最も多く(6月調査で59%)、次いで週0回(同26%)だった。
「ペーパーレス化を進めつつ、総務など捺印による決裁が必要な部署は週1回まとめてやればいい。ものづくり系の部署は同僚とのコミュニケーションは週1、2回、対面で企画の打ち合わせをすれば十分ということのようです」(湯川さん)
効率アップは会議にもあらわれている。全員がオンラインとなったことで、「オンライン会議は発言しづらい」「参加しづらい」といった壁が取り払われ、不必要な会議は絞られるように。さらにかつては目立った会議への遅刻も大幅に減ったという。湯川さんは、
「会議での無駄話が減ったことについては判断の良しあしがあり、コミュニケーションが不足しているのでは、との声も聞かれますが、会議自体の最適化はオンライン化によってかなり実現できている、と感じています」
と手応えを語る。
■海で山で創造的な仕事
湯川さんは、仕事の「質」にも好影響を感じているという。
「自分の好きな場所で働いていいんだ、『海でも山でもどこでもオフィスだ』と社内でよく言ってきました。各人が一番仕事のパフォーマンスを発揮できる場所を主体的に見つけ、よりイノベーティブな環境の中で新しいものづくりをしてほしい、というのが主眼です」
コロナ禍の中では原則自宅勤務のため、野放図に「海でも山でも」というわけにはいかないが、これは政府が推奨するワーケーションを先取りした発想ともいえる。
仕事の効率化だけではない。通勤時間がなくなり、家族と過ごせる時間が増え、ワーク・ライフ・バランスも充実している、との声も日を追うごとに多くなった。湯川さんは「とりわけ新入社員が社内のつながりやネットワークをどう築いていくかなど、人間関係への影響がどれくらいあるのかを把握するのは今後の課題です」と話す。
一方で、ヤフーの仕組みは完全な在宅勤務や、オフィスの撤廃とは異なる。コロナ禍の今は出勤を制限しているが、本来はオフィスでも自宅でもお気に入りのカフェでも、自分が最も創造性を発揮できる場所で自由自在に働けるのが制度の趣旨だ。このため、全社員が共通して行う仕事の場はオフィスからオンライン上に移行していく、というわけだ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2020年9月14日号