もともと採用条件に「事前の病院見学」を定めている病院が多く、見学は医学生のアピールの場でもある。コロナ禍でオンライン説明会を開いた病院もあり、見学は必須条件ではなくなってきたようにも見える。

「でも、人気が高い病院に見学に行くのが有利と考える学生が多い。研修は医師としての礎を築く大切な時間なのに、就活もままならない現状は医学生にとって死活問題です」(伊東さん)

■学生に不利な状況続く

 就活禁止令とまでいかなくても、多くの大学で規制がある。

「調べた範囲では、都道府県外から戻った場合、数日から2週間の自宅待機を課しているところが多く、それは今も続いています。県外で就職したい医学生にとって、不利な状況が続いています」(同)

 感染抑止のための移動制限が学生に与える影響を大学側も認めている。秋田大学広報課はAERAの取材にこう回答した。

「本学の医学生が例年、研修先を決めたタイミングは、5年次の夏から6年次の春と答えた者が多くを占めていることから、現状のコロナ禍を考慮しますと、現5年次医学生への影響は大きいものと思っております」

 医学生の不安は尽きない。都内の私大医学部の4年生は言う。

「どんな病院を選んでいいかわからないから、人気のある病院や先輩が行っている病院を選ぶことになるかもしれない」

 医学生だけでなく、研修医にも影響は出ている。多くの医学生は卒業後2年の初期研修の後、後期研修へ進む。その際も就活するが、沖縄県の友愛医療センターで研修医2年目の野中厚志さん(27)は、今年度、後期研修先を探すのをあきらめた。

「埼玉出身なので、昨年8月頃に後期研修先を探すため、関東の病院に見学に行くつもりでした。でも第2波で警戒のステージが上がった。万一、感染を広げてしまったらと考えると行きづらく、結局、断念しました」

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