AERA 2022年12月5日号より
AERA 2022年12月5日号より

 家計を守るため、今すぐ旧電力の「従量電灯」プランに逃げるのが得策だろう。

 ここで「うちは東京電力(または関西電力などの旧電力)だから大丈夫」と思った人は、もう一度自分の電力プランを確認してほしい。これまで料金プランを変更したことはないか? 

 旧電力でも低圧の自由料金プランは、もともと燃料費調整額の上限がない、もしくは11月以降に順次撤廃される。

■東京電力にもトラップ

 東京電力なら「スタンダードS/L」「夜トクプラン」など、関西電力なら「なっトクでんき」「eおとくプラン」などは上限なし。ちょっとしたトラップだ。四国電力は11月から、北海道電力・東北電力・中部電力は12月から、低圧の自由料金プランで上限撤廃が発表されている。

 大事なのは「従量電灯」と名の付いた、昔ながらのプランを選ぶこと。旧電力各社のサイトで下のほうの目立たないところに書かれている場合が多い。東京電力で従量電灯に切り替えるには電話のみでの受け付け。現在、非常につながりにくいが、がんばるしかない。関西電力などはネットでも切り替えられる。

 なお、既に一部の旧電力が「従量電灯に関しても今後の見直しを検討」と正式発表している。規制料金にメスが入るのは時間の問題かもしれない。

 さて、電気代の値上がりはいつまで続くのだろうか。

「先物取引動向を見る限り、24年3月頃まで高値圏にとどまりそうです。ただ、欧州ではLNGの価格が低下気味。ロシアから欧州にLNGを供給する海底パイプライン『ノルドストリーム1』が稼働停止状態、『ノルドストリーム2』も敷設工事は完了したもののドイツの承認手続き停止により運用されていません。『切羽詰まっている欧州なら高値で売れる』との思惑から世界のLNG船が集結してしまったのです。その結果、供給過多に陥っています」

 結局は気温次第な部分もある。北半球では冬本番に向けてエネルギー需要が拡大する。

「例年並みの寒さなら乗り切れるでしょうが、厳冬になると逼迫する恐れも出てきます」

 逼迫といえば、注意したいのは「市場連動型」を採用している新電力。楽天でんきは11月から燃料費調整額の部分をJEPX(日本卸電力取引所)の価格に連動させる方式に改めた。JEPXのスポット価格は需給逼迫により高騰する。実際、20年12月から21年1月にかけて通常1kWh当たり1日平均10円程度が平均154円(最大251円)まで上がった。

 市場連動型を採用している新電力は、楽天でんき以外にもいくつかある。普段は安くても、気温次第で電気料金が不安定になることを知っておこう。ライフラインでリスクを取りたくないなら、やはり旧電力の「従量電灯」プランに一時的にでも乗り換えを検討したい。(金融ジャーナリスト・大西洋平、編集部・中島晶子)

AERA 2022年12月5日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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