写真はイメージ (c)GettyImages
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 自然のなかで子どもを自由に育てる新しい幼児教育として注目される「森のようちえん」。この取り組みを取材した教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、大人が子どもに「教える」のではなく、「誘う」「見守る」態度で接する態度に、教育の未来を変える可能性を見出したという。「コロナ時代の子育て」をテーマに、生物学者の福岡伸一さんと語り合った。<前編から続く>

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■生物はほとんど「産みっぱなし」

福岡 最近「親ガチャ」という言葉が流行っているそうですね。あれなんて、ちゃんとピュシス(本来の自然、言語化される前の自然)の歌を聴けば、ちゃんちゃらおかしいとわかるはずです。

おおた それは興味深い!

福岡 まずですね、あなたが生まれてきたということはそれだけで宝くじを当てるよりも素晴らしい偶然の結果です。何十万個の卵子のうちのたった一つと、何億個もの精子のうちのたった一つが出会ってあなたが生まれました。ほかの卵子や精子はぜんぶ野垂れ死にです。その時点であなたは素晴らしいガチャを引いています。そしてほかの生物を見てください。ほとんどが産みっぱなしです。 

おおた 親という存在を知らない生物がほとんどですね。

福岡 さらに、大半は流されたり食べられたりして生まれてすぐ死ぬ。だからまず、自分が生きているってことを肯定するところから始めなければいけません。そこを認識できれば、親ガチャなんて愚かな言葉は言えないんじゃないかと思います。そのためにはやっぱり基礎学力は必要なんですけれど。

おおた 受験勉強的な学力ではなく、ものごとの道理をわきまえるという意味での基礎学力があれば、生きていること自体をもっと肯定的にとらえられるはずだということですね。

福岡 もちろん虐待やネグレクトという問題はありますが、それは親ガチャにはずれた云々という以前の、明白な犯罪行為ですから、すぐに公的機関の介入が必要な事象です。

おおた 自分も自然の一部として生かされている感覚をもつという意味では、日本には昔から「自然(じねん)」という概念がありました。あれはピュシスとは違うんですかね?

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