さらにギリギリまで追い込んで作業して何とか終わるというタイミングで、校了直前に自分がコロナに罹ってしまって、結局、発売日そのものをずらしてもらったんです。ただこれも今にして思えばちょっとケガの功名というか、結果的には校了直前まで詰めた内容で、突然二週間くらいロスタイムができてしまったので、本当にこれでいいのかと最後に何度も自問する時間ができました。実際そこで変更した部分も少なからずあって、自分も当事者となることでコロナという時代の影響も本に封印されたのかなと。熱は辛かったですけど、いい思い出ですね(笑)。
■100年後の誰かに届けるための本づくり
―─佐藤さんのタイトルの中でも定価1万5000円と高額なものになりました。これまでの写真集との違いは何だと思いますか?
傲慢な言い方になりますが、今回の本は売るための装飾はほとんどなく、タイトルから中身まで一貫して、「いつかこういう本を作りたい」をほとんど全部やってみた結果という感じです。今まで自分は『奇界遺産』含めて、まず人に見てもらわないと意味がない、と思って活動してきたので、キャッチーさはある程度意識してきましたが、今回に関してはほぼ完全にそうしたキャッチーさはありません。逆にこれを本当に書店に置いていいのかなと思うくらい、可愛げのない(笑)ソリッドな本になってます。
―─造本へのこだわりを教えてください。
デザインは前々から一度お仕事してみたかった佐藤亜沙美さんにお願いしています。サンプル制作にもほぼ一年かけて取り組んでもらって、フォント選びなんかでも今回の本のコンセプトに深く踏み込んだものを選択してくださってて、デザイン、造本ともに本当にすばらしい本になりました。
印刷は藤原印刷さんにお願いしたんですが、いま主流のUV印刷ではなく、手間暇のかかるけど仕上がりが良い油性印刷で印刷しています。僕が好きな作品をいくつも手掛けてるプリンティングディレクターの花岡さんも徹底的にやってくれて、印刷立会いも一週間以上立ち会ったんですが、おかげさまですばらしい出来だと思います。