だから今まで旅というのはどこまでも余暇的というか、「いつか行く」ためのものだったのが、「いつか死ぬ」の比重が増した分、もっと積極的に、いつかでなくて、いま見たいものをみよう、と思う人が増えるでしょうし、旅の需要というか、欲求は今後むしろ上がると思います。ただ実際はワクチンパスポートとかまたテロ対策とは違う別のハードルが一つ増えたことで、旅しづらくなる場所も増えるのも事実でしょう。
―─最後に、写真集『世界』のどのようなところを読者に見てほしいですか?
今回は「世界」と題打ってこそいますが、それはある意味でものすごくパーソナルなものです。見せるために撮った写真でさえなく、自分の記憶をそのまま晒しているような感覚といいますか。さっきも言った通り、広い「世界」のことでもあるし、僕が見てきた「世界」そのものでもある。とはいえ、一度本として出てしまえばあとは見る人それぞれの感覚に委ねるしかないので、見てくれた人がこの本の「世界」をどう捉えるのか、自分もとても楽しみです。
佐藤健寿
世界の民俗から宇宙開発まで、世界120カ国以上を巡って幅広いテーマで撮影。代表作『奇界遺産』シリーズは写真集として異例のベストセラーに。instagram@x51