11月8日、天体観測が趣味でもある筆者・早川智医師が撮影した
11月8日、天体観測が趣味でもある筆者・早川智医師が撮影した

 ハーシェルは亡くなる2、3年前まで精力的な観測を続け、1819年には詳細な彗星の観測記録を残している。しかし、その後はさすがに観測記録が少なくなり、1822年の死因は老衰といわれている。息子ジョンも健康に恵まれ79歳の天寿を全うした。さらにハーシェルの妹カロリーネは97歳まで長命している。家系的に長生きだったのかもしれないが、貴族になっても上流階級との華美な付き合いを避けて粗食に甘んじ(ふつうの英国料理かもしれないが)、真面目で規則正しい生活を送ったことも関係あるだろう。もちろん深酒すると天体観測はできないので、禁酒または節酒のはずである。

 実は、アイザック・ニュートン、エドモンド・ハレーなど近代天文学の夜明けに貢献した学者に長生きは多い。またチャールズ・ダーウィンなど生物学の父たちも長生きしている。18~19世紀の英国紳士階級出身の彼らにとって立身出生競争や金儲けに追われず、趣味そのものであった大好きな学問と田舎の暮らしで人生を楽しむのが、長生きの秘訣だったのではあるまいか。

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