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 AERA名物の「一行コピー」は毎週、どのようにして作られているのでしょうか。AERAは1998年、創刊10周年を記念して「腰くだけ発想法 アエラ一行コピー」を発行、そのノウハウなどを紹介しました。以下に、当時の編集部で「一行コピー」を担当していた一色清さん(のちにアエラ編集長、現フリージャーナリスト)の記事を紹介します。
 ぜひ、みなさんの創作の参考にしてください。

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担当者が見つけた作り方 テーマを決めて キーワード探す

 突然ひらめく、なんてこともたまにはあります。
 でもそんなものを待っていては、半年一本がいいところ。
 苦しんだ末、編み出した「作り方」をご披露します。

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 42年間気がつかなかったけれど自分は天才だったのではないか、と思う時がある。

 最近では、こんな時。木曜日の遅い朝、通勤の電車で吊り革につかまっている。頭の中で「しゃぶしゃぶ しゃぶしゃぶ」と念じている。窓の外は雨。突然、歌が浮かぶ。

「雨 雨 ふれふれ モフ担が 蛇の目でお迎えうれしいな ピチピチしゃぶしゃぶ ランランラン」

 大蔵官僚が、ノーパンしゃぶしゃぶに出掛けようとする心象風景そのもの、ではないか。心の中で「できた」と叫んで、私の気分もランランランとなる。

 木曜日は、アエラ中吊り一行コピーの締め切り日。会社に着いて、しばらくして、原稿用紙に「ピチピチしゃぶしゃぶ ランランラン」と書く。それをほかのデスクに見せる。期待どおり「これいいね」という声が聞こえる。「天才ではないか」と思う瞬間だ。

 しかし、実はこんなにスムーズにいくことはめったにない。「どうして何も浮かばないのだ」と思いながら、迫る締め切りに苦悶していることのほうがはるかに多い。ほかのデスクに助けてもらったり、改作してもらったりすることもある。天才(と思う瞬間)は忘れたころにしかやってこない。

 苦しみながらも、最近ようやく自分なりに「作り方」を見つけたような気がする。それをご紹介しよう。