「私立大学を中心に志願者数が減り、受験生にとっては大いにチャンスが拡大した入試でした」
今年の入試をこう振り返るのは河合塾教育研究開発本部の主席研究員、近藤治さんだ。
河合塾の調査によれば、首都圏にある私立大学の志願者数は前年比で約86%。29万2665人の大幅減だった。
大学別では青山学院大が同69%(1万7699人減)、早稲田大が同88%(1万2917人減)、法政大が同88%(1万2672人減)など、人気私大も軒並み影響を受けた。
志願者減を招いた要因のひとつが受験人口の減少だ。2010年から18年にかけて120万人前後を維持していた18歳人口は、21年度は約114万人にまで落ち込んだ。
加えて今年は、大学入試センター試験の廃止と大学入学共通テストの導入という大きな制度変更に、新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ事態が重なった。
◆薬学部の人気がコロナ禍で上昇
コロナの感染は東京や大阪など大都市が中心だったことから、地方では都心部を避けて地元の大学を受験する「地元志向」の動きが強まった。
「今年の入試後に河合塾が行った追跡調査では、北海道・東北・北陸・中四国・九州いずれのエリアでも、東京の私大を受験した人の割合は前年から数%下がりました。その分、地元の大学を受験した割合は上がっています。東京や大阪にウイルスが蔓延(まんえん)している、今行ったら大変だという受験生心理が大きく働いたのではないでしょうか」(近藤さん)
学部別にみた志願動向については、ベネッセ教育情報センター長の谷本祐一郎さんが「今年は理系学部の人気が高まり、文系学部の人気が下がる『理高文低』の傾向が見られた」と指摘する。
経済の先行きが不透明になると、就職率が比較的高い理系の大学への志望が集まる。こうした傾向は、08年のリーマン・ショック時にも見られたという。とくにコロナ禍で特徴的だったのは、医療系学部の人気が高まったことだ。