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Q 「結婚子育て」「教育資金」の特例はいつまであるの?

A 子や孫への贈与が一定額まで非課税になる「結婚・子育て資金の一括贈与」や「教育資金の一括贈与」といった特例は、いずれも23年3月末が期限だ。延長されてきた経緯があるが、今回、廃止や縮小が検討されている。

 なかでも、挙式や出産費用、保育料など結婚・子育てに必要な資金の贈与は、1千万円まで非課税となるものの、21年度の新規契約数はわずか153件にとどまる。1500万円までが非課税の、教育資金の贈与の新規契約数(8962件)に比べても少なさが際立つ。

 前出の山本さんはこう分析する。

「いずれも銀行などの金融機関に専用口座をつくって信託契約をする必要があり、資金は一括で贈与しても、使い道が認められなければ口座からお金を引き出すことができません。結婚・子育て資金の利用者が少ないのは、入学金や授業料といった用途が比較的明確で、まとまった額が必要な教育資金に比べ、利便性を感じられない点が大きいのではないでしょうか」

 ただ、廃止や縮小はされても、制度そのものは残る可能性もあると山本さんはみている。

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 専門家会合は今後の議論の結果を政府税調に報告する。今年12月に与党がまとめる税制改正大綱にも反映される見込みだ。前出の福留さんは、相続税や贈与税をはじめ、個人への課税を強めていく方向は今後も続くとにらむ。

「政府の財源が不足する中、企業の生産拠点の海外移転は進み、法人税は思うように伸びない。経済の低成長が続き、富裕な高齢者から資産の移転を促す必要もあります」

■値上がり期待の資産譲渡が鉄則

 見直しの背景には、生前の早いうちに贈与を促し、若い世代に資産が渡りやすい環境をつくる狙いもあるとされる。

 だが、ルール変更が見込まれるとはいえ、慌てて対策に乗り出せばよいものではない。前出の山本さんは言う。

「何も考えずいきなり贈与を始めてしまうことが最もよくない。まずは自分が相続税の基礎控除額を上回る資産を持っているか、節税対策が必要かをチェックするのが前提です。生前贈与をして相続税を減らす必要がない人から相談が寄せられるケースも目立ちます。対策が必要な人も、もらう人が喜ぶような資産を贈与したり、残したりするよう心がけることが大事です」

 その意味で税理士の板倉京さんは「贈与にあたっては収益が得られるものや、将来的に値上がりが期待できる資産を譲るのが鉄則」と強調する。

 例えば、賃貸用アパートの建物を贈与する場合、同じ価値の現金に比べて評価額を抑えることができる。アパートの建物の評価額は固定資産税評価額と同じで、時価の5~6割程度に抑えられるからだ。さらに贈与税の評価にあたっては「貸家」として扱われるため、固定資産税評価額から借家権割合分の3割を差し引くことができる。

 そのため評価額は、同じ価値の現金に比べて半分以下で済む。加えて、入居者からの家賃収入も期待できる。「資産そのものを安く移転できるのに加え、収入も移転できます」(板倉さん)

 まずはルールがどう変わるか、見極めが肝心だ。個人が置かれた事情はさまざまで、持っている資産も違う。税理士や司法書士ら専門家の力も借りながら、自分に合った対策を賢く探りたい。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2022年11月11日号

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