暦年贈与の場合、最低税率の10%が適用されるのは、非課税枠を差し引いた課税額200万円までなのに対し、相続税の場合は同1千万円までと、最低税率が適用される範囲は広い。基礎控除も相続税のほうが多く設定されているので、基本的には贈与税のほうが相続税に比べて税負担は重いとされる。

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Q 暦年贈与は今後できなくなるの?

A 政府税調の中里会長があえて否定的な発言をしたように、専門家の間では当面はなくならないとする見方が多い。前出の山本さんは言う。

「贈与はほとんどの人が普段からしている行為で、すべてを把握するのは技術的にも困難です。贈与した本人でさえ、すべて把握できているわけではないでしょう。暦年贈与をなくして相続時精算課税に一本化しようと思ったら、贈与分と遺産を合算する必要がある。それは難しいということで、暦年贈与は残す流れになっているのではないでしょうか」

 財務省によれば、専門家会合では、暦年贈与と相続時精算課税を選べる現行の仕組みは維持しつつ、後者の使い勝手をよくする方向で話し合っているという。

 近年、廃止や縮小がささやかれていた暦年贈与の年110万円までの非課税枠も、会合では俎上(そじょう)に上っていないようだ。

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Q 相続税への「持ち戻し期間」とは?

A 暦年贈与の場合、亡くなる前の3年間にもらった分は相続財産として扱われ、相続税の対象となる。この相続税として加算される期間を「持ち戻し期間」と呼ぶ。

 先の専門家会合ではこの期間の延長が議論されており、5~10年などに延びると見込まれている。

「いきなり10年に延長されるのは考えにくい。5年、7年と段階を踏んで変更されていくのではないでしょうか」(前出の山本さん)

■課税対象外の人へ贈与で負担減

 税理士法人チェスターの代表で税理士の福留正明さんは「延長されればインパクトは大きい」とみている。

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