小分けされた純金(イメージ)
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 相続税や贈与税の見直しに向けた検討が進んでいる。焦点は、生きている間に子や孫に資産を渡す「生前贈与」に関するルール変更だ。議論の成り行きいかんでは、相続対策を早めに見直す必要が出てくる。注目点をQ&A形式でみていこう。

【図表】贈与税(暦年課税)と相続税の特徴と違いはこちら

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「資産移転の時期の選択に、より中立的な税制をどう構築するか」

 政府の税制調査会(首相の諮問機関)が9月に設置を決めた専門家会合では、財政や税制の有識者が集まり議論がスタートした。10月5日を皮切りに、21日に2回目、26日に3回目の会合がすでに開かれた。比較的早いペースだ。

 とはいえ、「資産移転の時期の選択に、より中立的な税制」などと言われても、ピンとこない。

 財務省によると、親や祖父母が亡くなったり、あるいは、生きているうちに子どもや孫へ資産を渡すタイミングの違いによって税負担が重くなったり、軽くなったりといった差が出ないようにすることだという。

 日本の税制は主に、資産を移すのが死亡時なら相続税、生前なら贈与税の二本立てになっている。誰がどう負担するかや税率、手続きもそれぞれ違う。そこで、税負担の重さではなく「必要性に応じて資産を移転できるようにしていきたい」(財務省税制1課)という。

 専門家会合の設置を決めた9月の政府税調の総会で、注目すべき発言があった。

 会長の中里実・東京大学名誉教授が「『近々、暦年課税が廃止されるのではないか』『110万円の基礎控除(非課税枠)が使えなくなるのではないか』といった見方や懸念があるようだが、そうした議論を行うのではなく……」と、断りを入れたのだ。

 このところ、年末に向けてまとめられる相続税・贈与税についての税制改正要望で、暦年贈与や非課税枠の見直しが毎年のように取りざたされてきた。会長自ら、こうした懸念をひとまずは打ち消した形だ。

 ただし、議論の内容やスケジュールはすべて公開されているわけではない。そこで相続に詳しい税理士ら専門家に議論の行方を占ってもらい、ルール変更への対処法も聞いた。

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