卒業式をYouTubeでライブ配信した仙台市立八木山南小学校のPTA(写真/関係者提供)
卒業式をYouTubeでライブ配信した仙台市立八木山南小学校のPTA(写真/関係者提供)

 戸惑うこともあった。今年オンラインで総会に初めて参加した父親の一人は、質疑応答の際に「家が学校から遠く、子どもが早朝の電車に乗らなければならないので、授業が始まる時間を遅らせてほしい」と校長に直談判した。PTAとは関係ない唐突な要望に参加者は動揺し、画面越しに微妙な空気が流れた。今後オンライン化がさらに進めば、良くも悪くも多様な保護者の声が可視化されそうだ。

 学校行事を動画配信するPTAも現れた。仙台市立八木山南小学校PTAは昨年3月、卒業式をYouTubeでライブ配信した。必要な機材をレンタルで調達し、当日はPTA会長、副会長のほか、テレビカメラマンの保護者など計5人の父親で撮影・配信。当時副会長だった八巻孝さんはこう振り返る。

「卒業生保護者にとても喜ばれました。当日保護者は校内に入れなかったので、皆さん正装で昇降口に集まってスマホで動画を見ていましたが、号泣される方もいたそうです」

■強制のない組織が誕生

 式典は後ろの席だとよく見えず、前の席を取るには朝早くから並ぶ必要がある。ライブ配信はベストポジションから3台のカメラで撮影したので、「子どもの顔がよく見えて、かえってよかった」という声もあった。

 動画公開の際は、セキュリティーにも配慮。URLが外部に漏れないよう、同校6年生保護者のみが閲覧できるグループウェア上の掲示板に掲載した。

 加入や活動の強制をやめたPTAもある。神奈川県の公立小学校のPTAで昨春から会長を務める鈴木弥奈子さんは、前会長から引き継ぎを受けた際、仕事量の多さに衝撃を受けた。「自分はこれをやれないし次の人に『やって』とも言えない」と、PTAを変えることを決意した。

 コロナ禍でPTAの行事や業務がなくなったところに、鈴木さん自身の職場はテレワークや休暇の取得を推奨。時間を取れるようになったため、鈴木さんは改革の情報収集に注力し、本部役員の仲間と相談して新しい仕組みを練り上げた。年度末のPTA総会で会則変更や会の名称変更を可決。今年4月、強制のない新組織が誕生した。

 ただ、「コロナ後は元に戻る」と見る人も少なくない。一般会員としてPTA改善を働きかけてきた東京都の30代の母親は「昨年からお祭りやバザーはなくなったが、根本的にやり方を変える発想がないので、コロナ後はたぶん復活する」。千葉県の30代の保護者も「活動縮小はコロナの一時的な影響。放っておけば元に戻る」と断言する。

 PTAは変わるのか、変わらないのか──。答えはまだ見えないが、コロナを機に保護者たちは「PTAは変えてもいい」と気づき始めた。「去年通りにやらなければならない」が続いてきたPTAで、それは大きな一歩だ。(ライター・大塚玲子)

AERA 2021年12月20日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
疲れた脚・足をおうちで手軽に癒す!Amazonの人気フットマッサージャーランキング