日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。東京都葛飾区の金町にある手打ち麺のラーメンが自慢の呑めるラーメン店の店主が愛するのは、同じ修行先で苦楽を共にした店主の紡ぐ真っすぐすぎるラーメンだった。
【写真】ゆでる前に一玉ずつ手もみ…煮干しや魚介のうまみがあふれたラーメンはこちら
■安定供給できない「雉」を愛媛から取り寄せ……
JR常磐線・金町駅から徒歩2分、京成線・京成金町駅から徒歩1分のところにある“呑める”ラーメン店「立ち呑み居酒屋 金町製麺」。会社帰りのビジネスパーソンや地元客からラーメンフリークまで、店主・長尾優介さんの振る舞う日替わりのおつまみをさかなにお酒を楽しんでいる。
この店は有名店「麺や 七彩」が手掛けるラーメン居酒屋で、2010年にオープン。イタリアンや和食の経験もある長尾さんを店主に起用し、ラーメンだけでなく料理も楽しめるコンセプトで出店を決めた。
「お酒が飲めてラーメンも食べられるというお店が当時あまりなかったんですよね。シメのラーメンがあるというだけではなく、いろんなラーメンを出しているのも特徴ですね」(長尾さん)
ラーメンの麺は、超アナログな手法で作った手打ち麺を使うなど、居酒屋にしては本格的なラーメンをラインアップしていて、町中華とも違う。ありそうでなかったコンセプトで多くのファンを抱えているのだ。ブログで限定ラーメンを告知することで、ラーメンファンたちもこぞって訪れる店になった。
特に人気のラーメンは「雉(キジ)の中華そば」。雉はラーメン店ではなかなかお目にかかれない食材だが、油にパワーがあって個性的な旨味を放つ。強めの醤油ダレともしっかり調和するうまみの強さが特徴だ。
「雉はここ7~8年ぐらい使っています。愛媛から取り寄せているんですが、生産者さんの人柄が良く、こういうところの食材を使いたいなと思い、お付き合いさせてもらっています。安定供給ができないので、通常のラーメン店だと厳しいと思うのですが、うちならばOK。週に1回だけ送ってもらっています。アクが出ず、全てがうまみになるのが特徴で、珍しい看板メニューになっていると思います」(長尾さん)
長尾さんは毎日仕入れに出て、その日市場に出ているなかから、「いいもの」を使う。仕入れによってメニューも毎日変わるが、常連客もその違いを楽しみに店に通っている。
「コロナ禍で居酒屋営業ができなかった期間は、ラーメン一本で耐えきりました。この期間に新しいレシピを考え、今メニュー化をしています。仕入れに行って食材を見るとメニューが浮かんでくるんです。今後も変わらずこのスタイルでいきたいと思います」(長尾さん)
そんな長尾さんの愛するラーメンは、同じ「麺や 七彩」で修行をし独立した先輩が紡ぐ極上の一杯だ。