AERA 2022年1月31日号より
AERA 2022年1月31日号より
■結婚相手に経済力求む

 社会全体では性差が流動化しつつあり、昔ながらの性別役割や分業は当たり前ではなくなってきた。それでも、男性に経済的な自立を望む声はなおも支配的だ。国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った「出生動向基本調査」では、18~34歳の未婚女性のうち、結婚相手の条件として経済力を「重視する」と答えた人は39.8%、「考慮する」と答えた人は53.5%に上り、合わせて9割を超えた。一方、未婚男性の場合、「重視する」はわずか4.7%、「考慮する」は37.3%だ。多賀教授は続ける。

「個人レベルで見れば男性に稼ぎ手責任を求めない女性は少なくないし、男性も性別役割にとらわれない生き方や選択肢があることを知りました。一方、社会全体では旧来の意識も根強く、そこから外れて別の生き方へ踏み出すのは簡単ではない。選択肢が見えていながらそれがかなわないからこそ、生きづらいと感じやすいのです。さらに、稼ぎ手責任への期待が残るなか、家事や育児など新たな役割も求められるようになりました」

「仕事も家事も育児も」という期待が男性を精神的に追い詰める面があると多賀教授は言う。

 フリーランスの編集者として働く男性(32)も、生きづらさを感じる一人だ。大学卒業後、契約社員として2社で計6年働いた。激務でも給与はわずかしか上がらず、正社員登用の見通しも立たなかったので独立を決めた。年収は波があって不安定。昨年は400万円に届かなかった。仕事をするうえで女性より有利だと感じたことはないという。生活に困ることはないが、結婚できるとも思えない。

「家庭を持つなら、正社員である程度稼いでいる女性がいい。でも、そんなこと口にできません。『男女は平等』と言いながら、『男性に求める年収は700万円以上!』みたいな記事をたびたび目にして暗澹たる気分になります。父も『男は稼がないとダメだ』と言ってくる。女性ならこんな悩みは持たないのかなと思うと、『男はつらいな』というのが正直なところです」

■男性の悩み大きく変化

 男性の悩み相談を受け付ける日本男性相談フォーラムの福島充人代表理事は、「男性有利」とされる指標こそが男性の生きづらさを助長すると指摘する。

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