11月22日の朝、ちゅーるに混ぜた薬を舐めたあと、彼は動かなくなりました。

 息遣いも荒くなり、これは、私たちに「その時」を教えてくれているんだなと感じ、主人と共に車で動物病院に向かいました。着いてまもなく、彼は旅立ちました。

 わずか2歳3カ月で、この世から去ってしまったのです。

 荼毘に付すため連れて帰れなかったのですが、家に帰っても信じられず、私はひとりでベースメントに降りるのがこわくてたまりませんでした。どうしても、ケニアがいた場所を見つめ、涙がでてしまうのです。

■お帰りケニア、ありがとう

 1週間後、彼は小さな骨壺になって、家に戻ってきました。お帰りケニア。

ケニアの骨壺(左)と記念の足形プレート(提供)
ケニアの骨壺(左)と記念の足形プレート(提供)

 あれから4カ月が経ちますが、今も私はひとりでいる時、「ケニア」とつい名前を呼んでしまいます。

 日本で暮らしたたちは、皆長く生きました。だからこんな短いおつきあいになるなんて、考えてもみなかった。まだまだ一緒にいたかったです。

 もっと早く気づいてあげればと悔やむ気持ちもあります。ケニアのいない世界はさみしすぎます。思うようにいかないことばかり。That’s life! これが人生なのでしょうか。

 でも、感謝の気持ちも日ごとに増しています。

 だって、この地に来て、私はすごく彼に助けてもらったんだもの。振り返れば楽しいシーンばかり。すっと立ってちゅーるを食べる姿や、朝に鳴いて私たちを起こし、リスのハイウエイを見たり、鳥を見たらクラッキングしたり。リードをつけて散歩もして、たくさん遊んで、ぜんぶが宝のよう。温かなものを心に授けてくれました。家族になったのはたった2年間だけど、その2年には大きな意味がありました。

颯爽とお散歩中(提供)
颯爽とお散歩中(提供)

 新緑のカナダで、彼を思いながら、「頑張らなきゃ」と思っているところです。

 ケニア、私のために家にきてくれて、本当にありがとう。

「ほら!」リスが来た……お空から見ている?

美しく楽しい時間をありがとう(提供)
美しく楽しい時間をありがとう(提供)

(水野マルコ)

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「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com

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水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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