毎朝7時になると、ケニアは自分のルームから「朝だよー」と鳴いて私たちを起こしてくれました。人に抱かれるのはあまり好きでないらしく、最初のうちは拒まれて私は傷だらけ(笑)。でもだんだん抱っこさせてくれるようになりましたよ。とてもなめらかで、艶のある毛でした。
その毛を撫でてあげると、喉を鳴らしたり、お腹を出したり(彼の自慢っぽいお腹の模様を見せて)よく甘えてくれました。
私がパソコンに向かっていると、遊んでもらいたくて、後ろで「ねぇねぇ~」と言うように私を呼びました。いつまでも諦めず“お喋り”するので、部屋はとても賑やかでした。
カナダにもちゅーるが売っているのですが、ケニアはちゅーるが大好き。主人からもらう時は、決まって後ろ脚だけで立って、その姿が最高で。
ケニアには変な癖もあり、自分のごはん茶碗にいつも遊び相手のお人形を入れてました。そんなところも可愛くて、私はもう首ったけ、“寝てもさめても”彼に夢中でした。
■「ほらっ」並んでリスを見る日々
カナダのこの家には裏庭があり、小さな畑もあるので、家庭菜園をしながらケニアを裏庭に出しました。幸い、周りが高い塀で囲まれているので、脱走の心配はありません。
こちらには野生のリスがたくさんいるのですが、高い塀の上(私たちはリスのハイウエイ!と呼んでいた)をリスが走っているのを見ると、ケニアはちょっと興奮したように追ういかけようとしました。塀が高いので追いつけないのだけれど。
室内にいても、窓の外に何度もリスの姿が見えました。そのたびに私が「ほらっ、リス」と声に出していうものだから、「ほらっ、ほらっ」というだけで、ケニアは窓枠にジャンプして、ふたりでリスを眺めました。もう、「ほらっ」が私たちの合言葉みたいでした。
私はケニアと過ごすうちに、塞いでいた気持ちもいつしか晴れて、笑顔も増えたようです。
折しも、ケニアが来た翌年からコロナの蔓延で、日本への帰省のめども立たないまま。でもケニアがいたから、ステイホーム中も穏やかに楽しく過ごすことができました。