飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回は、カナダ在住の主婦、Tさんに愛猫のお話を伺いました。移住した海外に馴染めずにいた時、思いがけなく一匹の雄猫と出会います。Tさんはその野性的な外見と快活なキャラに夢中になり、毎日、笑顔で過ごせるようになりました。ところが2年経ったある日、獣医師から信じられない宣告を受けて……。募る思いを語ってもらいました。
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私のストーリーを聞いてください。
私は、日本で出会って結婚したイタリア系カナダ人の夫と共に、2018年12月にカナダに来ました。自分の両親を看取ってからの移住で、英語も“ペラペラ”に話せるわけではないため(主人が日本語で話すので)、新生活になかなか馴染めずちょっとさみしい思いをしていました。
そんな中、翌年(2019年)11月末、主人が子猫を抱いて帰ってきたのです。その子猫は、オドオドしながらも、少し野性的。主人がどこかで野良ちゃんを拾ってきたのかな?と思ったのですが、何と私への「クリスマスプレゼント」でした。
購入したと聞いて、驚くとともに内心ちょっと憤慨も。日本では周囲に野良ちゃんがいっぱいいたし、そんな野良ちゃんを飼ってきたし、“飼うなら保護猫”と思っていたから。
その子は“ベンガル”でした。戸惑いつつも、ヤマネコのような個性的な柄に惹かれました。じつは、密かに憧れを抱いていた猫種でもあったのです。
何と名付けようか迷いました。すると、主人がアイデアを出してくれて、野性的風貌から、「ケニア」となりました。
■艶々な毛の甘えん坊
カナダの家にペットを迎えたのは、それが初めて。日本を出る前に黒猫のアンという猫を16歳で見送っていたので、猫との触れ合いは2年ぶりでした。
ケニアと一緒に寝たかったけど、主人が猫アレルギーだったので、ベッドルームに入るのはNGにしました。その代わり、部屋の一室をケニア専用ルームにして、ケージやキャットタワーをセットしました。