
「“親が毒親だった”と、中高年となってから苦しさを訴える人は多いです」と、元自衛隊メンタル教官で心理カウンセラーの下園壮太さんは語る。特に女性が、母親に対する恨みを訴えるケースが増えるという。それはなぜか? 『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』を刊行した下園さんに聞いた。
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■中高年特有の「疲労」が与える影響
「親に対してのイライラが止められない」「私の親は毒親だったんです」と、カウンセリングの場で訴えるクライアントさんは珍しくありません。
というより、かなり多いという印象です。
若いころはそれほど気にしていなかったのに、中高年になってから、自分の親に対する「恨み」に気づいて、それがどんどん湧き出してきて止められなくなってしまう。こうした方々は、いら立つ自分、根に持ってしまう自分のこともひそかに責めているので、一層つらさを抱えていらっしゃいます。
親へのイライラや怒りは、「疲労」の影響が一番大きいです。
誰でも加齢とともに体力が低下していくもの。しかし一方で、中高年は仕事における責任、社会における役割は大きくなり、どうしてもエネルギーが不足した状態に陥りがちです。また女性の場合は、妊娠出産という大きなライフイベントを経て、さらに子育てや仕事との両立が続くこともあります(【図表】ライフイベントのストレス表参照)。
中高年は社会的、肉体的な疲労が重なり、そのせいで漠然としたイライラが始まる時期でもあるのです。
このような局面で「なんだかこれまでとは違う」と不安になり、「最近イライラしている自分」についてあれこれ原因を考えているうちに、中には、心の棚にしまってあった親への記憶に行き着く人が出てきます。
心の棚のうち、親に関するコーナーには、誰でも、割と多くの記憶が保存されているもの。探れば探るほど、いろいろなエピソードが出てくるでしょう。
親からのしつけは、子どもにとっては苦痛であることが多いです。