「便秘は病院に行くほどのことではない」と思っていませんか。実は、長引く便秘は生活の質を落とすだけでなく、時に命を落とす原因にもなります。子どもから高齢者まで、多くの人が一度は悩む便秘について、専門医に聞きました。
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便秘の定義は幅が広いです。「数日に1回しか出ない」だけでなく、毎日出るけれど出すのが大変、すっきり出ないなど「快適なお通じ」でないと感じるなら、それは便秘といえます。
■便秘は生存率を低下させるという調査結果も
横浜市立大学病院消化器内科診療科部長の中島淳医師によると、「哺乳類はからだの大きさに関係なく、12秒以内で排便するのが通常です。人間も例外ではないのですよ」とのこと。それも、いきんで「出す」のではなく、自然に「出る」ものだとか。中島医師はこう話します。
「今、便秘が注目されています。理由の一つには、海外の調査で、便秘の人はそうでない人に比べて、生存率が低いという結果が出たことです」
大腸内視鏡などの検査で原因になる病気が見当たらない便秘のことを「機能性便秘」といいます。このうち、症状を繰り返すものが「慢性便秘」(以下、便秘)です。この記事では、次の主な五つの原因と症状を解説していきます。
<便秘の主な五つの原因>
・女性ホルモン
・腸の過緊張
・加齢
・トイレの我慢
・便秘薬の副作用
※このほか、ストレス、水分不足、運動不足、温度変化による自律神経の乱れなども原因になります
まず、女性の便秘は朝食抜きやダイエットによる食物繊維不足、水分不足によるものが多いです。加えて、女性ホルモンも原因になります。月経前に多く分泌される「黄体ホルモン」には、腸の蠕動(ぜんどう)運動を弱める働きがあるからです。
「このホルモンに対する感受性が高い人は、月経前に便秘になります。ただ数日だけなので、薬を使ってコントロールすることをすすめています」(中島医師)
■若い人に多い「腸の過緊張」
高齢者に比べ、若い人は腸が緊張傾向にあるため、蠕動運動で腸が強く収縮して起こる便秘が多くなります。これは「けいれん性便秘」とも呼ばれます。松島クリニック診療部長の白倉立也医師はこう話します。
「食べたものは小腸で栄養が吸収され、大腸で大半の水分が抜かれ、残りかすが便になります。大腸が強く収縮すると、そこで水分が必要以上に吸収され、便が硬く石のようになって、排便しづらくなってしまうのです」