「手作りがこんなに注目される時代がやってきてびっくりしています。しかもどこのお店も評価されていて、業界としてもうれしいことだと思っています。素朴な良さ、手作りで響くものがしっかりお客さんに伝わっている。これからも個人の飲食店の良さが残っていくことを確信できました」(白岩さん)
“手作り”というコンセプトの中でできる限りのチャレンジをしたいと白岩さんは意気込み、麺を粉から作る自家製粉にも興味があるという。そんな白岩さんが師と仰ぐのが、自身の修行先でもあった「九段 斑鳩」店主の坂井保臣さんだ。今年で21年目を迎える老舗で、東京のラーメンシーンを牽引してきた。「ののくら」飛躍の土台には、坂井さんの教えがあるという。
■パリコレ出展のアパレルからラーメン店を開業 こだわり抜いた「本物志向」
2000年に九段下でオープンした「九段 斑鳩」は、魚介と動物を合わせたリッチなうまみを放つ一杯が大人気のラーメン店だ。ビルの老朽化で16年に移転した後も人気は衰えず、東京のラーメンシーンの最先端を走り続けている。
店主の坂井さんは東京生まれ。母親は給料をつぎ込んで江上料理学院(新宿区)の師範過程に通うほどの料理好きで、子どものころから家庭でも手の込んだ料理を食べて育つ。一方、いわゆるB級グルメに分類される食べ物にはあまり縁がなく、小学校時代から見よう見まねでルゥを使わずに小麦粉からカレーを作るような少年だった。
実家は曽祖父の時代から続く老舗のアパレル会社を経営。パリコレクションに出展する洋服を作る一流の会社だった。
「一人っ子ということもあり、いつかこの会社を継ぐんだろうなと思っていました。逆に、それを勉強を頑張らない理由にしていましたね」(坂井さん)
一浪ののち、神田外語大学の中国語学科へ進学。大学時代には将来の社長業を見据えて、新たな価値観を磨くために一年休学して海外へ。インドネシア、中国、カナダ、アメリカと渡り歩いた。大学4年からは実家の会社を手伝い始め、卒業と同時に入社した。