その本にもテレビで観たのと同じように、唐揚げを作るには、冷たい油に入れるようにと書いてあった。しかしハンバーグについては、焼いた後のフライパンでソースを作ると書いてあったので、その点は違っている。科学的な考えに基づくとはいいながら、彼らのいっていることは一致していなかった。科学的な考えに基づいているのならば、一致しないのは変じゃないかとは思うのだが、酸化をとるか、もったいないをとるか、自分にしっくりくるほうを選べばよいだけだろう。

 料理上手な人と一緒に食事をすると、お店の人に作り方をよく聞いている。先日、友だちの家に呼ばれて、ちらし寿司、はまぐりのお吸い物、ふきのとうなど春野菜の天ぷら、うどの酢味噌和え、ふきの煮物など、私が家では作らない品々が並んで、それがどれもとてもおいしくて感激した。はまぐりのお吸い物がとても柔らかい味だったので、理由を聞いたら、知り合いの料理を生業にしている人に、はまぐりのお吸い物の出汁をとるときには、

「カツオを入れるとはまぐりの味を邪魔してしまうので、うちでは昆布だけで出汁をとっている」

 と教えてもらったといっていた。ちらし寿司の寿司飯も、酢の味が勝っているものも多いが、とてもまろやかでいくらでも食べられそうだったので、他の寿司酢とどこが違うのかと聞いたら、一度、酢、砂糖、塩を合わせたら、火にかけて酸味を飛ばし、それを冷まして使っているという。その一手間が違うのだなあと感心した。それは私の味の好みであって、酸味があるほうが好きな人もいるだろう。酢のかわりに柑橘類を搾って使うという話も聞いた覚えがある。

 毎年、大きな重箱におせち料理をいっぱいに詰めて作る、料理上手な友だちも、低温調理をすると一度火を入れたタコでも、柔らかくなるといっていた。それも料理のプロから聞いたそうだ。しかしその低温調理というのも、湯煎で何時間も時間をかけなくてはならず、今は時短料理が流行っているけれども、やはり手をかけたものは一味違うのだなあと感心した。

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