私が子供の頃には「米を研ぐ」といっていて、母が台所の流しで、文化鍋に入れた米を手に力を入れて研いでいた。そばでじっと見ていると、やってみなさいといわれたので、教えられたようにやったが、

「手先だけでやってはだめ。腰を入れて親指の付け根に力を入れないと」

 といわれた。しかし小学生にそんなことができるわけもなく、特にやりたくもなかったので、米研ぎはしないと母親に宣言した。しかし同級生のなかには、器用に米を研ぐ女子もいて、

「お母さんみたい」

 と驚いたりした。

 しかしずいぶん前から、精米技術が発達したので、それほど力を入れて研ぐ必要はない、それどころか力を入れると米が割れてよくないといわれるようになった。以降、米は研ぐよりも洗うものになり、洗う必要がない無洗米も登場して、多くの人が愛用している。こういっては悪いが、私は無洗米は不精な人用だと思っていたのだが、実際は排水口に流してしまう、米の研ぎ汁による環境汚染を防ぐために開発されたものだと知り、勘違いをしていて申し訳ありませんでしたと、謝りたくなった。

 調理法もどんどん変わっていてこちらのほうにも驚かされた。栄養を無駄にしているという内容の本を読み、しゃぶしゃぶをすると、栄養が肉ではなく湯の中に流れ出てしまうとか、栄養価が高くなるりんごの切り方など、何も考えずに当たり前のようにやっていたことが違っていた。私はこの本を何冊か買って、料理好きの友だちに配ったら、みんな私と同じように驚いていた。

 私は一度、かき揚げを作ろうとして、大失敗して以来、家では揚げ物をしていない。油に入れたとたん、ぱっと四方八方に散って、大きめの天かす状態になってしまった。後日、料理上手の人に理由をたずねたら、油の温度が高かったので、もう少し温度を低くしたらそうならないはずと教えてもらった。しかしひとり暮らしの揚げ物は、油の処理も面倒で、労多くして実が少ないので、揚げ物はしないと決めている。このような理由で私は試せなかったのだけれど、料理教室が大人気という男性の先生が、鶏の唐揚げを作るのに、冷たい油から揚げるというのを、ザッピング途中に偶然テレビで観て、あまりに意外だったので、つい観続けてしまった。

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