ハンバーグは私も作った経験があるが、母親の作り方や、多くの料理本にあった通り、手で肉をこねて形作ったら、何も疑わずに真ん中をちょっとへこませた。火が入ると肉の中央部分が膨らむので、それを避けるためといわれていたと思う。そして油を敷いて熱したフライパンの中に入れた。

「こんなものかしら」

 とずっと様子を見ながらハンバーグを焼いていた。先に表面に焼き目をつけて、中にじっくりと火を通すというのが、一般的な焼き方だった

 この焼き目をつけて旨味をとじこめるというのも、これまでごく一般的にいわれていたが、実はそうではなかったらしい。焼き上がると、私は、「そこにおいしさが凝縮されている」という料理研究家の先生方の説を信じ、旨味(といわれている部分)をこそげ取るようにしてトマトピューレやウスターソースを加えて、ソースにしていた。しかしそれは酸化した体によくない油であるといわれてしまうと、以前にそのようにするとよいと教えていた料理研究家の立場がなくなってしまいそうだ。

 アップデートされた最新の料理の情報に基づくという、売れている料理本を買ってみたら、食の環境も昔とは大きく変わっていて、それによって米の研ぎ方も変わるし、野菜の保存についても、野菜が土に生えているときと同じ状態で、立てて保存しておくと長持ちするといわれていたのも、実はそうではないと書いてあった。立てて保存をいい出したのは誰なのだろうか。私の想像では、いい出した人も悪意があったわけではなく、葉物が長持ちしないと聞いて、その理由をあれこれ考えた結果、

「そうだ、生えているときと同じ状態にすれば長持ちするに違いない」

 とひらめいただけなのではないか。それが偶然かどうかわからないが、長持ちしたと感じた人がいて立てて保存説が通ってしまい、広まっていった。その後の食関係のいろいろな事柄の検証で、根拠がないといわれるようになったが、イメージと科学的根拠との違いだろうか。しかしこれまで明らかに結果が出なければ、説は立ち消えになるはずだが、この説が受け継がれていたのは不思議だった。

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