料理の作り方を思い出すとき、実家で母親がどういう手順で作っていたかが、まず頭に浮かぶのだが、調理師の免許を持ち、仕事にしていた母親は、たっぷりの油ではなく、フライパンに少量の油を入れて唐揚げを作っていた。
「唐揚げにはたくさんの油はいらない」
とはいっていたが、冷たい油の中には肉をいれておらず、いちおう適温といわれる状態まで油を熱して、それで揚げていたと思う。
料理教室の先生の作り方を手短に説明すると、鶏肉に下味をつけたら、1センチほどの深さに油を入れたフライパンの中に並べる。そして肉がひたるくらいに油を足し、弱火にかける。泡がぷつぷつと出てきたら、温度が100度になった目安なので、そうなったら火を止めて1分間置く。そしてまた弱火にかけて泡が出てきたら火を止める、を十分ほど繰り返し、一度、肉を裏返して3分ほど揚げて取り出す。そして油の温度を上げて高温にして、色づくまで揚げる。観ている限りでは、最初は油で煮ているような感じだったので、大丈夫かと心配になってきたが、試食した人たちは、衣がさくさくして肉はふんわり、ジューシーという感想だった。
野菜炒めをするときも、フライパンに油を敷き、そこに野菜を入れて火をつける。炒め物は強火でがーっと、というイメージだが、ずーっと弱火なのである。ハンバーグの肉は手でこねるのではなく、すりこぎで肉を叩いてまとめていた。形作った肉の真ん中をへこませる必要はなく、ここでも火をつけないで油を敷いたフライパンにハンバーグを入れて、弱火で火を通していく。またハンバーグが焼けると、その後にフライパンに肉のおいしい煮汁が残っているからと、それを使ってソースを作っていたのをかつてはよく観た。それがきちんとした作り方だと思っていたが、彼がいうにはそれは厳禁で、肉を焼いたフライパンの中の油は酸化していて、それを使うと酸化した油を体内に入れることになるので、体のためによくない。ハンバーグ用のソースは別のフライパンで作ってかけたほうがよいという話だった。