「風景写真は、『最初の一歩』がいちばん難しい。最初の一歩というのは着眼点」。風景写真の作品で問われるのは、いかにほかの人とは違うものを見つけられるか、それは「何を面白がれるか」といっても過言ではない――。『アサヒカメラ』2019年10月号では、62ページにわたって「紅葉と秋の風景の撮影術」を大特集しています。風景写真家の辰野清さんが解説する撮影ガイド「朝の放射霧が生み出す 光芒と紅葉」に続き、「国産カメラメーカーのレンズレビュー」を抜粋して紹介します。
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むちゃ振りとは思いつつ、国産カメラメーカー8社に「風景写真向きのいち推しレンズを紹介してほしい」と、お願いしたところ、真摯でアツい反応が返ってきた。「風景写真を愛好するユーザーに評判のよい製品です」。その新型もある。描写力と使い勝手をベテラン風景写真家が解説する。
■オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
プロアマ問わず、不動の人気を誇るレンズ。フルサイズ換算24~200ミリ、高倍率の小型ズームながら、全域F4.0の開放F値を実現。隅々まで圧倒的な高画質はもちろん、「5軸シンクロ手ぶれ補正」対応で最大6.5段の補正効果が得られるため、1、2秒程度のシャッター速度なら迷わず手持ち撮影できるのも人気の理由のひとつ。
過酷な環境に強い防塵・防滴性能を備え、近接撮影はレンズ先端から1.5センチ(広角時。望遠時は27センチ)と、小さな世界から大自然まで対峙できるのは風景写真家にとっては大きなメリット。星やハイレゾ以外、ほとんどのシーンで手持ち撮影ですむため、三脚も小型・軽量化し、これまで以上に機動力が増した。年齢とともに衰えてくる体力の低下を考えれば「総重量の軽量化を図る」ことで心と体力に余裕が生まれ、新たな撮影イメージも浮かんでくる。「これ一本」と割り切ってしまえばレンズ交換も不要になり、シャッターチャンスにも強くなる。(清水哲朗)
■キヤノンRF28-70mm F2 L USM
キヤノンからEOS Rが発表されたときに、最も気になったのがこのレンズだった。カメラが小型化したというのに、この重量と大きさは一体どうしたのかと。と同時に、このレンズはきっと恐ろしいほどの描写をするのではないか、と期待が膨らんだ。発売後すぐに手に入れ、実際に撮影してみた感想は想像のはるか上をいくものだった。
全域F2で撮れるというのはスペック上の飛び道具ではなく、まさに開放から極めてシャープ。このレンズにおいて絞るという行為は、被写界深度を調整するという目的では必要だが、描写を向上させるというためであれば必要ない。安心してF2を全ズーム域で堪能できる。撮影スタイルにも変化が現れた。森の中を手持ちでさまよい、開放絞りで撮っていくということが増えたのだ。単焦点レンズを数本持っていくことを考えれば、この一本でほとんどのシーンをまかなえるわけで、その重量や大きさも気にならなくなったというわけだ。(中西敏貴)