20歳まで生きた筆者の猫・がじらは慢性腎臓病と甲状腺機能亢進症を薬と点滴で治療した
20歳まで生きた筆者の猫・がじらは慢性腎臓病と甲状腺機能亢進症を薬と点滴で治療した
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 高齢の死因第1位と言われるのが慢性腎臓病だ。一度かかると治る病気ではないだけに、進行を遅らせることが鍵になる。治療の最前線を追った。

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 20歳まで生きる猫も珍しくない今、飼い主が気をつけたい病気は、なんといっても慢性腎臓病だ。加齢とともに発症率は増加し、10歳以上では30~40%、つまり3頭に1頭の割合になる。15歳以上だと81%が患っているという報告もある。

 慢性腎臓病とはどのような病気なのだろうか。

 猫専門の病院「東京猫医療センター」の服部幸院長は「何らかの原因で腎臓の機能が3カ月以上、低下している状態です」と説明する。発症すると腎機能の低下が進み、最終的には全身の臓器が機能不全に陥り、死に至る。原因ははっきりとわかっていないが、細菌の感染による「レプトスピラ症」や、2012年に発見された「ネコモルビリウイルス」との関連性、歯肉口内炎の影響などが疑われている。

 腎臓の働きは主に四つある。

(1)老廃物を尿として排出(2)水分やミネラルの調節(3)造血ホルモンの産生(4)ビタミンDの活性化

 だ。慢性腎臓病になると、これらの働きが阻害されるため、さまざまな症状が出てくる。

「代表的な症状には、尿がたくさん出る、飲む水の量が増える、食欲が落ちる、体重が減る、吐くことが増えるといったことがあります。飼い主さんが気づきやすいのは、水を飲む量と尿の量が増えることでしょう。飲水量の増加は、血液検査の変化より早く出ることもあります」(服部院長)

 慢性腎臓病がやっかいなのは、飼い主がはっきりと気づく変化が表れた頃には、病状が進行していることが多い点だ。しかも腎臓の組織は壊れると元に戻らない。そのため治療は残っている機能を長持ちさせ、進行を遅らせることが中心になる。

 だからこそ、年に1度の健康診断や日々の体調チェックを心がけ、怪しい変化に気づいたら、すぐに動物病院を受診することが大切だ。診断には血液や尿の検査、X線や超音波による画像検査を用いるが、欠かせないのが血液検査。腎機能を測る指標となる「血清クレアチニン値」と「血清SDMA値」を測定し、病気の進行具合を確認する。

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