BPSは中期から後期の慢性腎臓病の猫が対象だが、獣医師の裁量で他の病期への適応外使用が行われることもある。
水分補給では、飲水量を増やす工夫が必要になる。新鮮な水を用意したり、飲水用容器を家のあちこちに置いたりするほか、ドライフードより水分が多いウェットフードを与えたり、食事の回数を増やしたりするといいだろう。自分で飲む量だけでは足りない状況になると、皮下点滴が必要なケースが増えてくる。
ところで、今年は猫の腎臓に関して「AIM」という言葉が注目を集めた。AIMとは血液中にあるたんぱく質の一つで、体内で生じるゴミに付着し、掃除をする役目を担うとされる。AIMが働かないと、腎臓病など、さまざまな疾患の原因になるというのだ。
AIMはヒトの体内にもあるが、猫の場合はほとんど働いていない。そこで、AIMを補うことで体内のゴミの掃除がしやすくなり、腎臓の保護に役立つのではないか、という考えが生まれた。
この話題は愛猫家の間で一気に広がったが、服部院長は「現時点で猫の腎臓病の悪化を遅らせることができるという公開されたデータはない」と冷静になることを促す。
「慢性腎臓病に魔法の治療薬はありません。症状を見極めながら、信頼できる科学的データに基づいた最善の治療を行うことが、できるだけ穏やかに長生きさせることにつながります。それも、獣医師と飼い主さんが力を合わせ、病気に立ち向かうことが、とても大切なのです」
(ライター・角田奈穂子)
※週刊朝日 2022年12月23日号(2023猫カレンダー付き)