ピザの検出には「YOLO」
焼き色判定にはGoogle Cloudの「Vertex AI」を活用


 ここからは、ピザ焼き色判定AIシステムの仕組みに迫っていこう。開発にあたったIT本部の安藤綾香さんは、こう説明する。

「カメラの下にピザを置くと、物体検出アルゴリズムのYOLOが丸い形を検知し、ピザを認識します。すると、カメラが自動で撮影し、その画像をGoogle CloudのVertex AIに送信。Vertex AIが焼き色を見て、OK/焼き過ぎ/生焼けを判定します。ここまでわずか1秒です」

なぜ「ピザ+AI」を開発?
それは生鮮本部 MD室長のアイデアから始まった


 オーケーでは、2021年からAIのタスクフォースを組み、社内でのAI活用を模索していた。IT本部だけでは発想がIT寄りになってしまうので、生鮮本部のMD室長や食品本部のMD室長など、多様性のあるメンバーが集められた。


 最初にピザ焼き色判定AIシステムを思いついたのは、生鮮本部のMD室長だったという。IT本部長の田中覚さんは、その発想が生まれた背景をこう振り返る。

「ピザはオーケーを代表する人気商品です。専門のトレーナーによる研修を徹底するなど、人材育成にもかなり力を入れています。ただ、人が焼く以上、100%同じようには焼けません。先輩やトレーナーがずっと横について指南するわけにもいきません。そこで、『AIが先生役となって焼き色を判定してくれたら面白いのでは』と、生鮮本部のMD室長が起案してくれたんです」

 他の小売りに目を向ければ、売り場にAIカメラを設置して購買行動を分析したり、AIが需要を予測して発注を支援したり、データそのものをビジネス価値に変えるようなAI活用が盛んに行われている。オーケーはなぜ、ピザだったのだろうか。

「オーケーはプロダクトアウト的な発想をする会社です。いい商品を作ることで、お客さまによろこんでいただきたいのです。商品の評価にAIを使うという発想に至ったのは自然な流れでした」

 ただ、田中さんは、当の総菜・ベーカリー部門が了承してくれる自信はなかったという。

「AIって未知の世界じゃないですか。それに、AIといっても、ピザの焼き色の画像を使った機械学習なので、焼き色を撮影したり、教師データを用意したり、学習させるための手間がかかります。それを許容してくれるか心配だったんです」

 ところが、総菜・ベーカリー部門 ベーカリー部長の笹生守宏さんに話を持っていくと、二つ返事でOKしてくれた。

「笹生部長をはじめ総菜・ベーカリー部門のメンバーは、ピザへの愛情がものすごく深いんです。先ほど、『100%同じようには焼けない』と言いましたが、メンバーは非常に高いレベルで戦っています。実際にピザの写真を、OK/焼き過ぎ/生焼けの3パターンに仕分けてもらったところ、ピザ焼きの経験を積んだメンバーは、ほぼ全員同じ判定をするんです。私のような素人には、焼き過ぎも生焼けも、OKに見えるのですが」

 つまり、IT本部だけでは判定の精度は上がらない。現場の協力が不可欠ということだ。

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オーケーNo.1のピザ焼き職人が2000枚のピザ画像を目視で仕分け