東京都の公立中学校で特別支援教室の指導を担当し、支援教室に通う生徒や、不登校に悩む生徒の可能性を引き出すため尽力している、中澤幸彦先生。特別支援教室での学びに、AIやデジタルデバイスを用いた授業を積極的に取り入れています。「話す、書く、まとめる」ことが苦手だったある生徒は、AIを活用した学びで、大きな変化が起こったそうです。
【写真】自分で自分に成績をつける? ”自己評価通知表”はこちら「どんな自分になりたい?」の答え探しをAIが助けてくれる
私が特別支援教室で取り組んでいることの一つが、A I(Chat GTPやCopilot)などを使った学習支援です。
特別支援教室に通う生徒たちに伝えたいことは、「なりたい自分になる」ことの大切さ。そこで、私は、生徒一人ひとりの興味や関心に寄り添い、自己実現を形にするための支援の方法として、AIと連携することを考えました。
例えば、ある生徒は本を読むのが好きでしたが、感想をまとめること、言葉にして伝えることや文章にすることは苦手でした。また、自分がなぜ読書に惹かれるのか、その理由が自分でも理解できていませんでした。
そこで、この生徒にいくつか質問をしながら、彼の気持ちを引き出していくことにしたのです。
私はコーチングの手法で「なぜ、読書が好きなの?」「これまで一番心に響いた作品は?」「その本を好きだと思った理由は?」と、質問を重ね「好き」の深掘りをしていきました。
「本を読んでいると、描かれていることが自分のことのように感じられるから好き」という彼ですが、「一番心に響いた作品は?」という質問には答えることができませんでした。
その理由は、「自分の行動を変えられるほどの本に出会ったことが、まだないから」というもの。「だったら、自分を主人公にして小説を書いてみてはどうかな?」と、私は提案を投げかけました。
これをきっかけに、A Iを使った物語作りがスタート。AIに質問を投げかけながら、物語を作る過程で、彼自身も意識していなかった「理想の自分像」に気づくことができたのです。作品名は『四次元の教室』。主人公である”僕”が、出会うメンターたちからひとつずつ課題を与えられ、クリアしていくという成長物語です。物語を作る過程で、彼はいつの間にか自身にとってのサクセスストーリーを描くことができたのです。
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