オーケーNo.1のピザ焼き職人が、
2000枚のピザの画像を目視で仕分け
AIが「OK」か「焼き過ぎ」か「生焼け」か判定できるようにするには、どんな状態が「OK」「焼き過ぎ」「生焼け」なのか、AIに学習させる必要がある。教師データはどのようにして用意したのだろうか。IT本部の安藤さんが、地道なプロセスを明かしてくれた。
「実際に焼けたピザを撮影し、笹生部長に目視で仕分けていただきました。社員食堂の端っこに大型モニターを置いて、ピザの画像を一枚一枚映し、笹生部長が『OK』『OK』『焼き過ぎ』『生焼け』……と。1000枚のピザの画像を仕分けていただきました」
実は、ベーカリー部門チーフの望月さんが、ピザを焼きながら言っていた。「AIは笹生部長の分身だ」と。笹生さんは、オーケーの総菜・ベーカリー本部一番の職人であり、一番の眼を持っているという。AIに学習させる教師データを仕分けたのが笹生さんであれば、望月さんの言う通り、AI=笹生部長だ。
「でも、1000枚では足りなかったんです。実際に焼き色を判定してみると、その精度は78%と極めて低かった。識者に相談すると、『画像の枚数が少ないのでは』と。そこで、さらに1000枚増やし、2000枚にしたんです。笹生部長にあと1000枚の仕分けをお願いすると、快く引き受けてくださいました。それで、お言葉に甘えてしまいました(汗)」
しかし、後から気づいたことだが、精度が低かったのは画像が少ないからではなかった。本当の原因は、OK/焼き過ぎ/生焼けの配分を意識していなかったことにあったという。
今回使用したピザの画像は、商品として提供する焼きたてのピザを撮影したものだ。職人技で焼いたピザは「OK」が圧倒的多数で、「焼き過ぎ」「生焼け」はごく少数。つまり、「焼き過ぎ」「生焼け」の教師データが少なすぎたのだ。田中さんいわく、「いくら試験勉強をしても、勉強しなかったところが出たら点が取れないのと似たようなもの」だ。
「それに気が付かず、『あと1000枚も撮れば、焼き過ぎ、生焼けの画像が増えるだろう』と進めてしまったのがいけませんでした。本当は、OK/焼き過ぎ/生焼けを同じ分だけ用意すれば、精度を高められたんだと思います」(安藤さん)
「仮に、それぞれ300枚ずつ用意できれば、精度が上がるかもしれません」(田中さん)