AIシステムのコンセプトは「脱・職人」
理想は、新人もベテランも同じように焼けること


 神奈川県横浜市にある、オーケーみなとみらい店。本社に併設されたこの店舗では、IT本部を中心に、新たなテクノロジーを活用した研究開発が行われている。その一つが、焼きたてのピザの焼き色を「OK」か「焼き過ぎ」か「生焼け」か判定する、ピザ焼き色判定AIシステムだ。

「人間とAI、2つの眼を駆使して美味しいピザを焼いています」

 そう語るのは、ベーカリー部門チーフの望月剛さん。歴9年のベテランだ。ピザ焼き色判定AIシステムには構想段階から関わり、2022年9月の正式稼働からは、AIの眼とともにピザを焼いている。


「以前は、本物のピザとサンプルの写真を見比べて、『まだ白いな』『ちょっと焼き過ぎかな』と判断していました。それでも一定の品質は担保できていましたが、暗いと焼き過ぎに気付かなかったり、影が焦げに見えてしまったりといったことがありました」

 ピザ焼き色判定AIシステムに賛同したのは、「新人でもベテランでも、誰が焼いても安定して美味しいピザを提供できるようにしたかったから」。2024年には関西進出を控えるなど、出店拡大路線を突き進むオーケーにとって、その仕組みづくりは急務だった。

 とはいえ、望月さんの前腕にある複数の火傷跡は、400度のピザ窯と向き合い、技を磨いてきたことを切に物語っている。この流れを残念に思ったりしないのだろうか。

「全く思いません。お客さまに良いものを提供できるのが一番ですから。それに、自分が一番うまく焼けると自負しているとしたら、それもAIがしっかり判定してくれるんです」

「本当にうまい人はクオリティを維持できますから、何枚焼いてもAIは同じ判定をしてくれます。もう少し練習が必要な人にとっては、AIの評価が励みになって改善が進みます」

 ちなみに、今焼いているのは「チェリートマトのマルゲリータピザ」だが、他のピザでも判定できるのだろうか。

「できます。AIによる判定に具材はあまり関係ないようです。大事なのは縁の部分、つまり耳です。ピザの耳って、基本的に何も乗ってないじゃないですか。その耳が焼け過ぎたり、生焼けだったりするのが良くないんです」

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なぜ「ピザ+AI」を開発したのか?