
「だって、おかしいでしょう」
神奈川県に住む女性(66)は、不満をぶつける。
彼女が40年以上も疑問を抱き続けてきたのは、専業主婦は配偶者の扶養に入ることで自らは社会保険料を納めずに年金を受け取れる、いわゆる「第3号被保険者制度(3号制度)」の存在だ。女性は大学を卒業後すぐに就職した。両親が働いている姿を見てきたので、「働かない」という選択肢はなかったという。結婚、出産を経て、子育てをしながら働き続け、62歳で退職するまでの約40年間、保険料を支払い続けた。
「それなのに、『専業主婦』というだけで、もらえるなんて虫が良すぎます」(女性)
3号制度は、1985(昭和60)年の年金制度改正で導入された。当時、「夫は外で働き、妻が家庭を守る」という世帯モデルが一般的だった。国民全員が年金に入る「皆年金」制度は導入されていたが、専業主婦は自ら収入を得ていないという理由から、保険料の負担が免除される例外的な扱いとなった。また、離婚した際に自分名義の年金を受け取れないなどの課題もあった。3号制度創設には、女性の「年金権」を確立する狙いがあった。3号被保険者の保険料は、配偶者が加入している厚生年金制度の財源から一括して国民年金に納められている。
しかし、この仕組みに「保険料を支払わないのに年金をもらえるのは不公平だ」という不満は根強く、「専業主婦はズルい」といった議論も巻き起こってきた。
「免除されるのはちょっと……」
AERAがネットで実施した「専業主婦」に関するアンケートでも、「3号廃止に賛成」の声が多数寄せられた。中でも目立ったのが、制度に対し「不公平」という声だ。
大阪に住む会社員の女性(58)は、こんなモヤモヤ感を吐露する。
「なんで、働いていない人の年金の分まで、私たちが負担しなければいけないの?と思います」
中部地方に住む医師の女性(49)は、こんな不平等感を覚えたと言う。
「大学院に通っていた29歳からの4年間、アルバイトをしながらちゃんと国民年金を払ってきました。それなのに、結婚をしているからという理由だけで免除されるのはちょっと……」