しかし2000年代以降はこのパートという働き方が、自立生計が必要な若者やシングルマザー離婚した女性、未婚男女にも広がり、低賃金や不安定雇用が拡大した。また、同一労働同一賃金の「同一労働」の定義には、仕事内容や責任だけでなく配置転換の範囲まで含まれている。日本型正社員制度の中で、非正規社員は前提が異なるため、仕事内容や責任が同じでも賃金差が法的に許される。一方で、正社員は企業命令の配置転換や残業は当然に認められる。こうした日本的雇用慣行にあって、3号制度は有配偶女性の不満の噴出を抑える役割を果たした、という。

「要するに、3号制度には『配偶者の扶養』という形で制度的に女性の非正規化と低賃金労働を後押ししてきた歴史があります。しかし少子高齢化が進み、40年までに現役世代が約1千万人減少するとされる中、女性が一人前の賃金を得られるようになることは、日本の経済成長に不可欠です」

3号制度に支えられてきた人も

 さらに、家族モデルも変化していると指摘する。主婦を扶養できるほどの収入を得られる男性は減り、同時に離婚リスクの高まりから、低収入になりがちな結婚・出産を躊躇する女性も増えている、と。

「また、結婚し子どもを持っても、夫婦それぞれ一人前の賃金を得られる社会を構築することは、高齢化と少子化が同時に進行する日本特有の人口構造上も、男性賃金の下落傾向と女性賃金の上昇傾向という世界的な潮流から見ても重要なのです」

 実際、女性の社会進出や共働き世帯の増加などによって第3号の人数は、95年度の1220万人をピークに、2023年度末で686万人と半減している。

 ただ一方で、3号制度に支えられてきた人も少なくない。

「3号制度は、子育てや家事に忙殺されている主婦へのご褒美のようなものでした」

 こう話すのは都内に暮らす、ぼっちさん(50)だ。

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