大学卒業後は一般企業に就職し、仕事にやりがいを感じ働いていた。しかし、30代後半で出産した後、職場でハラスメントに遭い適応障害を発症し、やむなく退職の道を選んだ。その後は、第3号被保険者として、夫の扶養の範囲内でパート勤務を続けながら、障害と向き合いつつ無理のない形で子育てをすることができた。そこから生まれるちょっとした精神的余裕が、幸せを生んでくれたという。
「やはり、3号制度に守られていたところが大きかったです」(ぼっちさん)
40代の女性は、3号廃止の議論に戸惑いを隠せない。
「中年になって突然、『これからは専業主婦だと年金がもらえません、働きに出てください』と言われても困ります」
その先にどのような社会を
大学卒業後は国家公務員として働いていたが、長時間労働や人間関係などで体調を壊し、双極性障害を発症して退職。結婚後は専業主婦となり、出産、育児、親の介護にも追われてきた。最近は、更年期障害も重なって、とても働ける状況ではない。それなのに、今になって「これからは専業主婦だと年金がもらえません、働きに出てください」と言われても困るという。
「そもそも、20年以上もブランクがある専業主婦を企業は採用しないと思います」(女性)
3号制度の廃止を見据えた時、その先にどのような社会を目指すべきなのか――。
大妻女子大学の永瀬教授は、「非正規や中途採用であっても社会保険に加入できるだけでなく、子どもを持っても自立できる賃金を得られる働き方が当たり前になる社会になることが、経済成長だけでなく、少子化の緩和のためにも必要」と語る。
「働きたくても働けない人は第3号被保険者に限りません。例えば、非正規雇用者やフリーランス、学生など第1号被保険者の中にも、子育てや病気のために就労が難しい人がいます。配偶者のいないシングルマザーは、低収入でもそもそも3号になれません」